2012 Fiscal Year Research-status Report
環境応答性機能を発現する液滴挙動のメカニズムの解明
Project/Area Number |
24656469
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡野 泰則 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90204007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伴 貴彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (60454485)
高木 洋平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40435772)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Marangoni効果 / Korteweg効果 / 脱濡れ効果 / ソフトマター / 自己組織化 / 環境応答性機能 |
Research Abstract |
今年度は、本研究の主題である1)脱濡れ効果、2)Marangoni効果および3)Korteweg効果によるChemo-Hydrodynamic現象の解明に関する基礎研究の2)と3)を行い、以下のことが分かった。 pHに依存し界面活性が変化する界面活性剤を用い液滴の自発運動に関する実験を行った。界面張力と界面の熱力学データから算出されるMarangoni係数と界面活性剤の脱着速度定数を定量的に算出し、流体力学的な不安定性を加味した線形安定解析により予測される不安定性の発生点を実験結果と比較した。5つの異なるpHを持つ緩衝溶液を用いた系における不安定性の閾値を検証すると、一つの系を除き、理論解析と良好な結果が得られた。不安定性が発生する流れがより高次な効果により発展しており、その点を加味していないことが理論解析と実験結果の不一致な要点と考えられる。今後はこの効果を加味して更なる解析を行う予定である。 水性二相系を用いたKorteweg効果による液滴の運動は、レイノルズ数が10-3以下という非常に小さな値のため、対流の影響による流体力学的な要因により、揺らぎが巨視的な領域まで発展することはできない。そのため、等方的な濃度場及び対称的な形状を持つ液滴が自発に運動を生み出す対流による非線形項ではなく他の要因と考えられる。そこで我々は対称性が破れる原因を、マッハツェンダー干渉計を用いて実験的に検証した。濃度場の対称性が破れる時間発展を定量的に測定したところ、対称性は液滴内部より先に外部から破れることが分かった。これはKorteweg効果による推進力が非線形性を持つ化学ポテンシャルに起因していることが原因である。この実験結果はシミュレーションによる結果と定性的に一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を自己点検として(2)おおむね順調に進展していると評価した。その理由は、3つ行う課題のうち2つの2)Marangoni効果および3)Korteweg効果による液滴の自発運動に関する基礎研究において、大幅な進展が1年で達成できたことがあげられる。 2)Marangoni効果では、pH応答性の自発的な運動の要因を究明することと金属イオンなどの化学信号による液滴運動の制御が目的である。その前者に関して、界面張力と界面の熱力学データから算出されるMarangoni係数と界面活性剤の脱着速度定数を定量的に求めることにより、自発運動の要因を実験的に干渉した。その結果、液滴内部に対称的な循環流を発生させる推進効果と抑制効果を実験的に算出し、液滴が自発的に動き出す不安定性の閾値を線形安定解析から求めることができ、実験結果と比較を行うことに成功した。なおこれらの結果は、国際的に評価の高い界面の物理化学に関する学術雑誌、Langmuirに2報掲載された。 3)Korteweg効果では、低レイノルズ数における不安定性の発現のメカニズムと液滴の変形の要因を探索することが目的である。この1年において前者の不安定性の発現に関して、非線形性を持つ化学ポテンシャルが主要因であることが分かり、濃度場及び不安定性の時間発展をシミュレーションで再現することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脱濡れ効果では、液滴の運動モードが基盤との反応速度の違いによって変化する要因を究明することが今後の研究目的である。液滴周りに分子レベルで展開される先行薄膜の存在を実験的に検証し、その領域における反応性の変化を考慮に入れた新しいモデルを立て、数値シミュレーションを行い、現象を解明する。 2)Marangoni効果では、金属イオンなどの化学信号による液滴運動の制御が今後の研究目的である。不規則な運動から指向性を持った運動に変化する要因は気液界面に発生する不安定性が、有力な候補であるため、その作業仮説の検証を平成25年度前期に行う。平衡および非平衡時における各界面の界面張力の測定と流れ場の可視化を実測および比較し、指向性の発生要因を特定する。 3)Korteweg効果では、液滴の変形の要因を探索することが今後の研究の目的である。非平衡度および臨界点からの距離を変化させて、液滴運動と変形の関係性を定量的に求め、液滴挙動に及ぼす物理化学的要因を実験的に検討し、平衡および非平衡時における物性値の測定および流れ場の可視化実験を行う。変形の支配因子と考えられる勾配エネルギー係数の定量的な測定とそれを基にした2次元3成分系における数値シミュレーション結果と実験結果を比較検討する。また、溶質分子であるポリマーの分子量および塩の種類を変化させて、同様の実験を行い液滴挙動に及ぼす系の物性値の影響を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画を以下に記す。 界面の物理化学データの測定に必要な解析ソフト(370,000円)、測定セル、滴下ニードルや蛍光指示薬など(150,000円)、旅費(100,000円)、その他(学会参加費および論文)80,000円、合計 700,000円
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