2012 Fiscal Year Research-status Report
光触媒による炭素-炭素結合形成を伴う高選択的芳香環官能基化反応
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24656490
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 寿雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80273267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 炭素-炭素結合形成 / 光触媒 / 芳香族 |
Research Abstract |
芳香環の官能基化は,高温高圧下で反応性の高い化学物質を用いた多段階反応により,多量の副生物を伴い製造されている例が多く,反応条件が温和で反応経路が単純で無駄の少ない環境調和型の反応プロセスへの置換が切望されている.申請者は,光触媒を応用して温和な条件でかつ単純な化合物から出発して芳香環の官能基を可能とする反応系の開発にに挑戦しており.既に光触媒を用いてベンゼンに水を作用させてフェノールに変換する直接的な炭素-酸素結合形成(芳香環ヒドロキシル化)やベンゼンをアンモニア水でアミノ化する様な炭素-窒素結合形成(芳香環アミノ化)を高選択的に進行させることに成功し,ごく最近,まだ低効率ながらも革新的な反応として,ベンゼンとアセトニトリルからシアン化ベンジルが得られることを確認した.そこで本研究ではこれを足がかりに,炭素-炭素結合形成を伴う高選択的芳香環官能基化反応(シアノメチル化)を確立させることに挑戦することとした. 平成24年度は,反応条件(反応基質比と光量,波長,温度,反応時間)と光触媒の最適化(酸化チタンの種類・比表面積と助触媒金属添加率)を主に行った.反応基質比と波長,それから添加する助触媒の種類が重要なポイントであることが分かり,特にパラジウムを助触媒として用いることが最も重要なファクターであることが明らかとなった.また,ESRによってシアノメチル化反応に関与する活性ラジカル種の同定を試み,適切なスピントラップ剤を用いることで,シアノメチルラジカルの検出に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光触媒的な芳香環シアノメチル化について,必要な反応条件や光触媒が明らかになり,特にはパラジウム助触媒が特異的に高活性で高選択に本反応を進行することを明らかにし,ESRによりラジカル中間体の同定に成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
同位体化合物(重水素化アセトニトリル,重水素化ベンゼン)を反応基質とした反応を行い,反応速度における同位体効果の測定により律速段階を定めて,付加・脱離機構についての知見を得る.また,生成する水素とシアノベンゼンを質量分析により解析し,本当に反応中間体と水素ラジカルとが反応しているのかどうかを明らかにする.また,Pd助触媒を,添加率(0.1-2wt%)と添加法(光析出法,ナノ粒子光吸着法,含浸担持法)を変えて添加し,その粒子径・形状をTEMにより観察し,ナノ粒子の数量を計算し,電子状態をXAFS,特に電子状態に敏感なL殻吸収XANESにより確認し,同等な状態のサンプルの光触媒活性を比較する.また,FT-IRによりそれらの金属ナノ粒子と相互作用したベンゼンやシアン化ベンジルの存在の有無を観察し,同位体シフトにより確認し,各助触媒金属に特有な吸着状態の有無を検討する.さらには,助触媒成分を合金化して,アンサンブル効果(Pd原子一つで活性点となるか,複数の集団である必要があるか)を検討し,金属助触媒の本質を検討する.これらにより金属助触媒の特異的な機能(触媒作用)を明らかとして,反応機構を決定する.光触媒活性の経時劣化が起こることがあるが,この原因を明らかにして,対策を講じる.最後に,総括として研究成果をまとめ,必要に応じて特許申請を行い,学会発表を行い,論文を投稿し,成果を広く国内外に発信する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に,主に化学薬品(特に同位体含有化合物),高圧ガス等の消耗品の購入や,放射光実験や学会発表のための旅費として使用することを計画している.
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