2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長棟 輝行 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20124373)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光分解性PEG脂質 / 細胞パターニング / 一細胞アレイ / 細胞分離回収 |
Research Abstract |
再生医療から細胞生物学の基礎研究までの幅広い分野において、目的とする細胞種を選択し、正確に分離回収する技術が必要不可欠となっている。そこで、本研究では、光応答性材料をコートした基板上に一細胞ずつ並べた細胞アレイを作製し、目的に適う細胞のみを光照射によって迅速簡便に回収する技術の開発を目的とした研究を行った。 以前の研究において、光分解性のPEG脂質をコートした基板を用いて、光照射によって細胞のパターンを作成する技術を開発した。この基板上の光を照射していない領域では、PEG脂質の脂質部分が細胞膜と相互作用して細胞が固定化され、一方、光照射領域では、脂質部分が分解によって失われ、細胞が固定化されない。従って、非照射領域にのみ細胞を固定化することができる。この技術を使って、一細胞ずつ並べた細胞アレイを作製するために、スポット状の非照射領域を並べて、そこに細胞を固定化した。その際に、スポット径を最適化したところ、直径約10 μmのマウスプロB細胞株BaF3細胞を一細胞ずつ並べるには、直径10μmのスポットを作成するのが最適であった。また、最適化後は、全スポットの90%以上が一細胞で占められている精度の高い一細胞アレイの調製に成功した。次に、基板上の狙った細胞だけを正確に取り外す方法を検討した。共焦点レーザー顕微鏡下で、基板上の狙った細胞のみに光を照射することにより、細胞を固定しているPEG脂質を分解して細胞を遊離させた。光照射していない細胞はほぼ全て基板上に残ったことより、狙った一細胞のみを選択的に遊離させる技術が開発できたと言える。また、この手法により、同一視野内の狙った複数細胞を同時に遊離させることも可能であった。以上のように、一細胞アレイの構築と一細胞ずつの回収に関する基盤技術の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、平成24年度に、上記基盤技術の開発に加えて、開発した技術を用いて細胞の選択的回収を行うことを計画していた。実際に、実験計画に従い、二種類の蛍光を発する細胞(緑色蛍光タンパク質恒常発現BaF3細胞(EGFP-BaF3)、および、さらに赤色蛍光試薬で染色したEGFP-BaF3細胞)を準備し、それらを混合して底面を光分解性PEG脂質コートしたマイクロ流路内に固定化し、片方の細胞のみの回収を試みた。その際に、流路中の固定化細胞の画像から、迅速に回収する片方の細胞の位置座標を決定し、その位置の細胞にのみ選択的に光照射を行うプログラムが必要であった。そこで、画像解析ソフト(ImageJ)のマクロ機能と共焦点レーザー顕微鏡の光照射制御系のプログラムとを用いて、自動的に指定した蛍光特性を有する細胞のみに光照射を行うシステムを構築した。このシステムを用いて、片方の細胞のみの回収を試みたところ、チャンバー内の対象領域からは狙った細胞のみを遊離させることに成功したが、流路の出口からはもう一方の細胞も混ざったものが回収された。これは、流路とチャンバーとの接合部位などに非特異的に吸着した細胞の混入と考えられ、現在接合部位の形状等の検討を実施している。このように、想定外の問題が生じ、その解決に時間を要しているため、研究計画に比べて、到達度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、我々の開発した光応答性基板を含むマイクロ流路系から、狙った細胞のみを正確に回収する技術の開発に力を注ぐ。現在、市販の細胞走化性検査用の簡易マイクロ流路を転用して実験系を構築しているが、チャンバーと流路との接合部分に細胞が溜まりやすくなっているため、細胞が溜まりにくい形状の接合部を有したマイクロ流路系を構築する。 システムの改良によって正確に細胞を選択回収する技術が確立すれば、Gタンパク質カップリング受容体(GPCR)の細胞内局在変化を指標にしたスクリーニングを試みる。細胞外pHの低下を感知してそのシグナル伝達活性を増強させるGPCR(G2Aタンパク質)は、炎症や癌が創る酸性領域での免疫細胞調節に関わる極めて重要なGPCRである。しかしながら、その活性制御メカニズムには幾つかの仮説があり、どれが正しいのか明らかにされてこなかった。一方。本年度、我々の予備的な実験により、G2AがpHに応答して細胞内部へ移行することが明らかになってきた。そこで、ランダムに変異を入れたG2A遺伝子ライブラリーを細胞に導入し、膜発現したG2Aに蛍光標識した細胞集団を調製し、細胞アレイを構築する。各pH環境下でリガンドを作用させ、内部移行応答が変化した細胞を一細胞アレイでスクリーニングして光照射によって回収する。その後、一細胞PCR技術を用いてG2A遺伝子配列を解析し、pH応答性に関連するアミノ酸残基を同定し、その活性制御の分子メカニズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
なし
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Research Products
(6 results)