2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子内シャペロン改変によるタンパク質のフォールディングメモリーの解明とその応用
Project/Area Number |
24656501
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 充美 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90183201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | プロテインフォールディングメモリー / プロペプチド / 分子内シャペロン / カルボキシペプチダーゼY / 活性化エネルギー / 分子ディスプレイ / アンフィンセン理論 / 触媒効率 |
Research Abstract |
タンパク質の構造はその一次構造により一義的に決定されるというアンフィンセン理論がある。しかし、その理論に当てはまらない興味深い例が見つかってきた。多くのプロテアーゼはN末端にプロペプチドと呼ばれる分子内シャペロンを有した不活性な前駆体として合成される。プロペプチド自身は活性を持たず、タンパク質の成熟化に伴い除去されてしまうが、成熟体のフォールディングに必須な部位となっている。出芽酵母由来のカルボキシペプチダーゼY(CPY)もN末端にプロペプチドを有する前駆体として生合成される。分子ディスプレイ法を用いてプロペプチドへの変異導入による成熟体の活性変化を解析することにより導き出した「プロテインフォールディングメモリー」というタンパク質構造形成の新規な現象に関して解明した。 CPYのプロペプチドは成熟体を不活性な前駆体として維持することから阻害剤としても機能するが、CPYには別にCPY特異的阻害タンパク質ICが存在する。プロペプチドとICの相同性検索により、両者の配列には相同性が認められた。更に、相同性のあるICの配列はCPYと相互作用するのに必須な部分であることがCPY-IC結晶構造より明らかとなり、プロペプチドの成熟体への結合様式が推察された。これらの情報を基に作製したプロペプチド変異体CPYを酵母分子ディスプレイ法を用いて調製し、活性を測定したところ、成熟体のアミノ酸配列は同一であるが活性が変化しているCPY成熟体が得られた。更に、精製したこれらのCPYを速度論的解析により比較したところ、触媒効率の上昇が認められた。活性化エネルギーにも変化が認められることから、プロペプチドへの変異導入が成熟酵素の機能や構造の改変を誘導した可能性が示唆された。これらの結果をプロテインフォールディングメモリーとして、分子内シャペロンが関わるタンパク質構造形成について新たな知見となった。
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