2012 Fiscal Year Research-status Report
複合脂質膜を用いるエイズ治療に関する基礎および応用研究
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24656509
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
上岡 龍一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70099076)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エイズ / 細胞膜 / ナノメディシン / 脂質 / リポソーム |
Research Abstract |
成人T細胞白血病/リンパ腫 (ATLL) は、HTLV-I(ヒトT細胞白血病ウイルスI型) の感染が原因となる T 細胞の悪性腫瘍疾患であり、HTLV-I感染者の一部が ATLL を発症する。そのため、ATLL に対する安全で効果的な新しい治療薬の開発が急務となっている。 リン脂質(DMPC) および PEG 系界面活性剤 C12(EO)25からなるハイブリッドリポソーム (HL-25)を用い、ATLLモデルマウスに対するin vivoでのがん抑制効果について検討した。 まず、ATLLモデルの作成として、T細胞、B細胞および NK 細胞の免疫機能を欠損した高度免疫不全マウス (Balb/c Rag-2/Jak3) を用い、ATLL (MT-4) 細胞をマウスの脾臓に移植し、ATLL の肝転移モデルを作成した。HL-25 の MT-4 細胞の肝転移モデルマウスへの治療効果を検討したところ、HL-25 の 14 日間の静脈投与後の肝臓重量は、未処理のコントロールおよびDMPC単一リポソーム投与群と比べ、有意に抑制された (p < 0.01)。さらに、肝臓の組織切片作成後のHE染色および免疫染色 (CD4, CD25) においても、HL-25 処理により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。次に、HL-25 による ATLL 移植マウスの延命効果について検討した。HL-25 を 14 日間の連続投与したATLL 移植モデルマウスにおいて、平均生存日数が 72日であった。一方、コントロールおよびDMPC単一リポソーム群では、それぞれ、57 日および 56 日であった。さらに、HL-25投与群の延命率は、125%であり (p<0.01)、顕著な延命効果が明らかとなった。(Nano Bulletin, 1, 120105-1-4, (2012))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイブリッドリポソーム(HL)によるエイズ治療効果に関し、(1)HIV感染リンパ細胞におけるHIVウイルス生産および排出抑制効果が明らかになった。(2)in vitroにおいて、エイズ関連リンパ腫細胞の細胞膜をターゲットとしたアポトーシス誘導の制がん機構の詳細が明らかになってきている。(3)in vivoにおいて、エイズ関連リンパ腫モデルマウスに対する治療効果が得られてきている。さらに、医学部(熊本大学エイズ研究センター)との活発な研究討議により、研究が進行しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
がんなどの難治性疾患およびエイズなどのウイルス感染細胞は、一般的に正常細胞に比べて膜の流動性が高い。これらの流動性をターゲットとし、HLの流動性(揺らぎ)およびエイズ関連リンパ腫やエイズ感染細胞の細胞膜の流動性(揺らぎ)と、HLの治療効果に関する多くの事例を増やし、一般則として確立する予定である。詳細なメカニズムについては、エイズ感染細胞およびエイズ関連リンパ腫細胞およびHLの流動性を、様々な分析法により明らかにする事で解明が可能である。 このように、エイズ感染細胞およびエイズ関連リンパ腫の細胞膜物性をターゲットとするHLの治療効果を、医学部との共同研究により進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(34 results)