2012 Fiscal Year Research-status Report
空気液化推進を目指した低温壁面での超音速速非平衡凝縮の実験的研究
Project/Area Number |
24656515
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
前野 一夫 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30133606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 匡則 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60436342)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 航空宇宙工学 / 衝撃波 / 可視化 / 圧縮性流体力学 / 極低温工学 / 高速凝縮 / 空気液化推進 / レーザー干渉計測 |
Research Abstract |
本研究は空気液化型推進機の基本メカニズムとなる大気吸い込み型エンジンの内部高速空気流れ中の液化機構の解明のために、極低温域の小型無隔膜衝撃波管を独自に開発し、衝撃波面後方の極低温壁面への非平衡高速凝縮現象を実験的に解明するものである。今年度は実験用の極低温型小型無隔膜衝撃波管を構築するために、独自のダブルピストン式衝撃波管駆動装置(MOチューブ高圧駆動容器)を設計開発し製作外注した。また、対流熱伝達および高速凝縮現象に関する実験研究と流れの可視化手法についてこれまでの研究内容を発表し、海外の研究動向を探るため、国際学会に出席参加し本テーマに関して研究打ち合わせを行った。同時に旧実験装置を用いた-80℃程度の低温の実験を遂行し、レーザー液膜干渉計測法の確立と、自作の白金薄膜温度計を用いた凝縮による熱流束の計測を実施した結果との比較を行った。 実験の結果ではまだ温度変動計測(この結果より熱流束を計算)の計測データにノイズが大きく、S/N比の良い結果が得られていないが、レーザー液膜干渉計測においては代替フロンを用いた低温の液化実験で液膜成長を捉えることができ、入射衝撃波と反射衝撃波両方の流れにおける液膜成長の比較データを取得することができた。これにより、凝縮液膜生長過程における高速流れの存在の有無の影響が解明できると予測している。小型高圧駆動部容器の開発と設計変更(小型化)に時間がかかったために、高圧駆動部の納入が遅くなり、本年度の衝撃波管全体装置としての実験は未だ充分に行われていないが、高圧駆動部としての作動特性実験は実施し、現在、データを纏めている。なお、院生は国内外の学会においても申請研究に関連する講演発表を行った。現在、小型衝撃波管被駆動部の改良設計(特に標準品とのマッチング)を進めており、真空断熱と液体窒素冷却部、および可視化窓との設計すり合わせを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究において初年度は極低温実験用小型無隔膜衝撃波管実験装置を低圧部を含めて完成させ、全体としての作動特性実験を行う予定であったが、小型無隔膜衝撃波管(MOチューブ)の高圧駆動容器部の設計(特に小型化とピストン作動の速さの維持)が難しく、作動部の高速作動可視化を実施するための改良と低価格化に時間がかかった。さらに、初期の予想よりMOチューブ高圧容器駆動部本体の価格が高価となったために、低圧の被駆動部の設計製作を変更する必要が生じた。本年度は小型の高圧駆動部の設計と発注製作を実施し、小型極低温の低圧被駆動部と測定部の製作は次年度に実施することとし、当該年度は高圧容器部のダブルピストンの作動特性や、本実験研究の基本となる計測手法の開発に研究の主力を注ぐこととした。なお、特殊実験用の小型極低温衝撃波管の被駆動部と測定部(複数窓付)、液体窒素外部導入冷却部および真空断熱部をそのまま設計製作外注すると一千万円程度にもなるので、申請者が詳細に検討し、標準品や市販品を組み合わせて独自の工夫を凝らして、極力、安価に設計することが必要である。現在のところ、高圧駆動部の特性は満足のゆくものであるので、小型で充分に冷却可能な被駆動部・観測部・真空断熱部の設計開発を行い、次年度の全体装置完成に結びつけるべく基礎実験を進めている段階である。なお、本申請研究全体の基礎となるレーザー液膜干渉計測法と可視化手法については今年度の実験(旧装置を用いた全体実験)を通して低温域での確立がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の今年度の達成度でも記したように、極低温実験用の小型衝撃波管被駆動部と観測部の設計を完了させ、製作外注し、全体の実験装置システムを完成させる。次に、極低温実験用小型無隔膜衝撃波管としての全体特性データを取得し、衝撃波マッハ数と初期条件としての絶対温度・圧力パラメータとの関連、液体窒素冷却度のチェック、衝撃波作動時温度上昇の計測、衝撃波の入射および反射特性を調べ、全体としての実験装置作動特性を最終的に把握する。必要があれば、さらに改良を加えるものとする。なお、高圧駆動気体用ヘリウムの供給が逼迫しており、今後とも予断を許さない状況になっているが、基礎実験は乾燥高圧窒素等で進めるものとする。このため入射マッハ数の範囲が比較的低く、充分な超音速流れ中の凝縮条件が達成されるかどうかの実験も必要となる。レーザー液膜干渉計測手法は低温条件でも充分に達成されているので、液体窒素温度に近い条件での入射衝撃波後方の高速流れ中の極低温壁面凝縮の実験が可能となると考えている。 また、平成24年度に実施した極低温における薄膜温度計による温度(熱流束)計測手法も確立させ、液膜成長実験の結果との比較を行う。さらに、拡大光学系を用いた高速度撮影を試み、高速流れにおける温度/速度境界層底面での凝縮液膜成長表面の安定・不安定状態を可視化する。この実験計測は極めて難しく、まだ、-100℃以下の極低温域では実験手法が確立されていないが、光散乱を利用する可視化実験かあるいは全反射を利用する可視化を試みる予定である。 以上の実験手法の確立により、液膜干渉と液膜表面の可視化の同時計測が可能となり、空気液化推進機の極低温液化現象の基本的メカニズムが解明されることと予想している。これらの実験研究遂行に際しては国内外の専門家との連絡打合せが必要となり、国際学会への参加と、学会での発表・研究打ち合わせを計画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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