2012 Fiscal Year Research-status Report
液中ブレイクダウンとマイクロ波照射を用いた衝撃波・気泡による動噴霧形成メカニズム
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24656516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中谷 辰爾 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00382234)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 推進・エンジン / 衝撃波 / 二相流 |
Research Abstract |
放電およびレーザーにより液体内でブレイクダウンを起こし,誘起された衝撃波や生成した気泡との干渉,気泡崩壊のメカニズムの解明と,微粒化促進技術の可能性検討のため,実験的研究を行った.最初に実験装置の作成を行った.直径0.1mmメートルの噴射口を備えた,内部観察可能な可視化容器を作成した.レーザーブレイクダウンにおいては,光学系を通して容器内部で集光される.電気火花の場合には,電極を設置し,電極間隙で放電する.ブレイクダウンの様子および内部気泡挙動の観察ができるよう設計した. 製作した実験装置を使用し,ブレイクダウンと気泡の挙動を密閉容器内で調べた.レーザーの場合にはレンズの焦点距離を,放電の場合には電極間隙の大きさを変化させ,ブレイクダウン閾値といった基礎特性を明らかにした.純水に対する放電の場合,電極間隙の増大とともにブレイクダウンの閾値は増大した.レーザーの場合には,集光用凸レンズの焦点距離が80から120mmの間で変化させた.各々の場合において,10mJ程度の入射エネルギーでブレイクダウンが可能であった.焦点距離が大きくなるにつれて吸収されるエネルギー量は小さくなった.概ね気体の場合と同様の挙動であることを示した. ブレイクダウン時の液相内の挙動をシュリーレン法により調べた.ブレイクダウンと同時に気泡生成および衝撃波が伝播する.レーザーの場合には,レーザー軌跡に沿って多数の気泡が生成する.放電の場合には電極間隙に大きな気泡が生成する.特にレーザーを用いた場合には,衝撃波の伝播により,液相内に微小なキャビテーションが生じることが観察された.波は容器内を繰り返し反射し,キャビテーション気泡が振動していることがわかった.これらの多数の気泡との干渉は非常に非定常的現象であり,これらの干渉により,噴射および微粒化することが可能である.また,噴射試験を開始し微粒化の促進を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,液体内ブレイクダウンによる気泡生成,衝撃波との干渉および気泡崩壊を利用してジェット流を作り,局所的高圧力噴射およびそのメカニズムを明らかにすることを目的としている.本年度は実験装置の作成およびブレイクダウンに関する基礎データの取得,加圧無しの噴射試験を行った.実験装置は微細な噴射口の設計製作は困難であったものの,要求性能通りの実験装置が作成された. 装置完成後は,本実験の基礎データである液相内でのブレイクダウン特性の取得を行った.レーザーブレイクダウンの場合には,集光焦点距離とブレイクダウン閾値,放電の場合は電極間隙とブレイクダウン閾値の関係が求まった.これにより,気相との類似性を明確にすることができ,噴射実験に必要な基礎データを蓄積した. ブレイクダウン時の液相内の挙動は,当初の想定より非常に複雑な現象であったが,本計測システムで追跡可能であることが確認された.レーザーによる多気泡の生成や圧力波によるキャビテーションの形成は科学的にも非常に興味深い.これらの現象の把握や計測手法の確立は,研究発展を考えるうえで必要不可欠である. 液相内の現象把握に加え,実際に噴射試験を行った.レーザーおよび放電によるブレイクダウン両方により,純水に対して液体噴射と微粒化が確認された.本研究の新規性である噴射手法の有効性が確認できた.また,液体噴射速度と入射レーザー強度の相関性を確認することができた.現時点では,内部の気泡とキャビテーションの関係は確認に至っていないが,今後の研究指針が明確になった.さらに,レーザーと放電の間で噴射強度に大きな違いを観察することができた.ブレイクダウン位置や内部状態を詳細に観察することでこれらのメカニズムの把握と最適な微粒化形態の実現可能性が示された.以上,最低限の目標は十分クリアしており,今後の展望に関して有益な情報や結果を獲得できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験により,液相内ブレイクダウン時に生成される気泡挙動,衝撃波の伝播後に形成されるキャビテーションなど等の複雑な挙動が観察された.これらの挙動は高速ジェット流の形成メカニズムにおいて非常に重要である.これらの基礎的挙動を明確にするため,より可視化範囲の大きな容器を作成して実験を行う. 今年度は前処理無しの純水を使用していたが,翌年度は十分に脱気された純水および温度を変化させて実験を行う.液相内の衝撃波の通過によるキャビテーションの生成挙動を定性的に明らかにする.また,純水内に意図的に飽和するまでガスを溶込ませ,同様にブレイクダウンを起こし,キャビテーションの生成挙動を観察する.気体溶込みおよび入力エネルギーをパラメータとし,衝撃波の強度変化によるキャビテーションの生成挙動を定性的に明確にする.キャビテーションの生成挙動および割合に対する経験式を獲得することを目指す. キャビテーションの生成を明確にした後,噴射口を容器に取付け,噴射特性を調べる.今年度は,噴口に対するブレイクダウン位置が噴射速度に大きな影響を及ぼすことが分かった.今年度の実験装置では,放電の場合電極位置を変更することはできなかった. 翌年度は放電位置を調節できるよう容器を改良し,これらの影響を調べる.また,噴射速度に及ぼす影響が初期の衝撃波強度によるのか気泡との干渉によるのかが明確ではなかった.翌年度は観察領域を拡大し,噴射時期と気泡や衝撃波の様子を明確にする. 容器内部の衝撃波およびブレイクダウン気泡およびキャビテーションの関係を明らかにした後,それらの干渉が噴射口からの外部噴射や微粒化挙動に及ぼす影響を調べる.キャビテーションの有無による噴射挙動の変化,衝撃波との干渉効果に着目し,微粒化挙動を把握する.また,噴射圧をかけた場合においても実験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は気泡挙動を追跡するためのハイスピードカメラ購入と可視化容器の試作に研究費を使用した.今年度の結果を踏まえ,翌年度は可視化容器および噴射器を実験パラメータに合わせて製作する. 衝撃波と気泡の干渉を見るため,燃焼器全体をアクリル等で作成あるいは可視化用の光学窓を大きくする.また,観測用の光学窓を増設する必要がある.それに伴い,金属材料,アクリル,光学ガラス,配管,バルブ,チューブ等を購入する.工作可能なものは学科内の工作機器を用いて内製するものの,0.1mm程度の噴射口など,特殊加工技術が必要なものに関しては外部業者および関係機関に工作依頼を行う.その費用を次年度の研究費に計上する.実験用容器の作成に加え,光学系の改良を行う.容器内のブレイクダウン時に生じる気泡やキャビテーションはシュリーレン法あるいはシャドウグラフ法を用いて観察している.衝撃波を含むこれらの干渉挙動を測定するには高フレームレートで測定する必要があるのに加え,三次元的に分布するキャビテーション気泡などを可視化するにはレンズの被写界深度が深い必要がある.現在はキセノンランプを光源として利用しているが光量には限界がある.そのため,光源として連続波を用いたレーザーを使用することが望ましい.レーザーを用いたシュリーレン法測定系の光学部品に研究費を使用する.それにより,高精細な画像測定が可能になる. 本研究で使用しているレーザーを集光する光学部品,エネルギー測定を行うための光学系および容器の測定窓などは強力なレーザー光により破損する場合がある.これらは消耗品であり,交換用の光学部品及び光学窓を購入する.基本的には上記の実験系の製作,消耗品の購入を行う.可能であれば,容器に高周波数に対応した圧力計を購入する.これにより,入射エネルギーと衝撃波の挙動の関係,気泡崩壊挙動特性が把握できる.
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