2012 Fiscal Year Research-status Report
宇宙から地球上の全ての地点に着陸できるモーフィング宇宙輸送システムの研究
Project/Area Number |
24656520
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
麻生 茂 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40150495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 泰寛 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80380575)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙往還機 / モーフィング機能 / 再突入力学 / 有人宇宙輸送システム / ウエーブライダー / 揚抗比 / 再使用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、宇宙から地球上の全ての地点に着陸できるモーフィング宇宙輸送システムために、あらゆる飛行状態に対して順次最適な機体形状を取ることができるモーフィング機能(形状変更機能)を備えた有人宇宙輸送システムについての研究である。 今年度は、当研究室で開発した最も空力性能が高い三角形胴体断面の主翼付き機体形状をベース形状として、軌道上から超音速域を経て亜音速域までの飛行領域のそれぞれで最も高い空力性能を示す機体形状を考察した。具体的な研究方法は、1)過酷な空力加熱に耐えるモーフィング機構、2)極超音速域から亜音速域までの揚抗比の変化、3)モーフィング中の空力安定性、4)有効性検証のためのコンピューター上での軌道から滑走路着陸までのシミュレーションからなる。研究実績は以下の通りである。 1)は、最も高い空力性能を示した三角形断面胴体の翼胴形状を基本形状として亜音速域では胴体角部をシャープにした形状、ストレーキを付けた形状を考案した。いずれも積極的に渦を発生させて揚力増加を狙った。また、超音速飛行においては、高い揚抗比が期待できるウエーブライダー形状を亜音速域での形状からモーフィングができる形状として新たに採用した。この機構は、翼自体を胴体の下部に収納しておき胴体外側へせり出すことが出来るため容易にモーフィングが可能であり、かつ再突入時の過酷な空力加熱にも耐えることができる。亜音速域ではストレーキ形状が最も高い揚力係数を持つことを明らかにした。2)は極超音速域でのウエーブライダー形状がより高いL/Dを示すことを明らかにした。これらの成果は日本航空宇宙学会やJAXA主催の学術講演会等で発表し高く評価された。また、TSTOの形態についても機体形状の有効性を明らかにした。 3)と4)は、モーフィング機構を有する機体のCFD結果が得るまでになったので、引き続き研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な研究計画とその達成度は以下の通りである。 1)過酷な空力加熱に耐えこともできるモーフィング機構については、最も高い空力性能を示した三角形断面胴体の翼胴形状を基本形状として亜音速域ではストレーキを付けた形状を考案し、超音速飛行においては、ウエーブライダー形状を新たに考案した。この機構は、翼自体を胴体の下部に収納しておき胴体外側へせり出すことが出来るため容易にモーフィングが可能であり、かつ再突入時の過酷な空力加熱にも耐えることができる。亜音速域では胴体角部をシャープにすることと主翼にストレーキを付けた形状の風洞実験を行い、ストレーキを付けた形状が最も高い揚力係数を持つことを明らかにした。 2) 極超音速域から亜音速域までの揚抗比の変化については、極超音速域でのウエーブライダー形状の風洞実験を行い、ウエーブライダー形状もフラットな翼形状と翼の外側部分を下方に折り曲げた形状も試み、後者がより高いL/Dを示すことを明らかにした。亜音速域ではL/Dは三角形断面胴体の翼胴形状を基本形状が同じ迎角では最も高い値を示すが、ストレーキ形状の揚力は同じ迎角ではより高い値を示すため基本形状よりもより小さな迎角で飛行できるため結果的に高いL/Dを示す場合があることが明らかとなった。また、ストレーキ形状の高い揚力は滑走路での着陸速度を下げるためより安全に着陸できることを明らかにした。3)モーフィング中の空力安定性については、モーフィングによる形状変更によってトリムを取る位置が変わるのでそれに伴い重心位置の調整により達成できるという見通しを得た。4)有効性検証のためのコンピューター上での軌道から滑走路着陸までのシミュレーションについては、モーフィング機構を有する機体のCFD結果が得るまでになったので、引き続き研究を進める。以上により今年度予定していた研究目的をほぼ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度の研究成果を踏まえて、機体形状をさらに進化させて、さらなる性能向上とその実現性を検証する。 極超音速域は、揚力が最大を示す迎角と揚抗比が最大を示す迎角が異なるので機体の迎角を変えながら突入パラメータ(W/CLS)と揚抗比L/Dの値を使って地球周回軌道からの投入経路の計算を行いダウンレンジとクロスレンジを評価、最もダウンレンジとクロスレンジが大きい迎角を求める。ウエーブライダー形状について後退角、翼前縁の曲率半径を変化させて最適な形状を求める。この三角翼形状の背面には三角形状の胴体が設置する。極超音速域及び超音速域の飛行においては宇宙輸送システムは比較的高い迎角を取ることから機体の空力的な性能は流れ場の前面の形状でのみほとんど決まっており、ウエーブライダー形状の背後の形状にはほとんど依存しないことを考慮して研究を進める。超音速域は、揚抗比が最も大きな形状を見出す。このとき、超音速域のウエーブライダーのような形状を維持しつつ、翼表面の折れ曲がる位置と下に折り曲げる角度を種々変えて揚抗比の変化を調べ、最も高い揚抗比を示す形状を見出す。亜音速域は、すでに数多くの計算結果を得ているのでその中から最適な形状を吟味する。 それぞれの機体形状を連続的に実現していく仕組みについて検討する。これらの三つの形状は全く独立ではなく、互いに最適な形状に近い形に変形をさせることを目指す。様々な形状変更機構の仕組みの検討とその形状で実現される機体の性能評価を逐次行い、最終的に、極超音速域、超音速域、亜音速域のそれぞれの飛行領域において最適に近い空力性能を出すことができるモーフィング機能を備えた有人宇宙輸送システムを形成する。 この研究には、大学院生2名(実験的研究及び数値的研究)を配置する。これにより極超音速域、超音速域、亜音速域の全てで実現できる最高の揚抗比を達成できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験には、九州大学に設置された超音速風洞(縦250mm,横200mm)、低騒音風洞(幅2m、八角形、最高風速60m/s)及び宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の超音速風洞、遷音速風洞を用いる。風洞実験のための模型材料、モーフィング機構を確認するための電子部品等が必要である 空力性能の推算のためのCFD解析と有効性検証のためのコンピューター上での軌道から滑走路着陸までのシミュレーションに計算機が必要である。 研究成果の発表と資料収集、情報収集のために旅費が必要である。 平成25年度においては研究系h100万円のうち、70万円を物品費に充当し、残り30万円を旅費に充当することを計画している。 以上の研究経費を共同研究者である谷 泰寛准教授とともに使用する。
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