2012 Fiscal Year Research-status Report
液体金属を推進剤としたバルブレス・レーザーアブレーションスラスタの研究
Project/Area Number |
24656523
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
船木 一幸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50311171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀澤 秀之 東海大学, 工学部, 教授 (30256169)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 航空宇宙工学 / 推進・エンジン / レーザー / レーザー推進 / マイクロスラスタ / 液体金属 |
Research Abstract |
繰返しパルスレーザー光を液体金属ターゲット(推進剤)に照射しながら推力を得る、100μN クラス小型レーザー推進機の実験実証を目的に研究を実施している。本研究では、過去に数多く研究されてきたレーザーアブレーションスラスタ(金属などの固体ターゲットに短時間大強度パルスレーザーを照射してジェットを生成するタイプ)の欠点である推進剤供給方式を抜本的に改善する試みとして、液体金属ポットにレーザーを照射する、バルブが一切不要な新しいタイプの推進機を目指す。 小型レーザースラスタ実験システムは、レーザー、液体金属推進剤を装填したターゲット、推進剤ターゲットを搭載した振り子式推力測定スタンド、ならびに、振り子の変位を測定するレーザー変位計から構成される。平成24年度は、小型レーザースラスタとレーザースラスタの推力測定に必要な推力測定スタンドの設計製作ならびに感度評価と、ターゲットの基礎設計を実施した。外来ノイズの影響を取り除いた精密な推力測定のために、真空チャンバを防振台の上へ設置して、真空チャンバ全体を防振したレーザースラスタ実験システムを構築した。また、直径60cmの真空チャンバ内に設置されたねじり振り子式推力測定スタンドでは、マイクロニュートンクラスの高い測定感度を確認した。ターゲットについては、インジウムなどの液体金属を加熱して供給するシステムを検討し、レーザー照射の際の焦点距離制御さえ出来れば液体金属をアブレーションさせる見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H24年度は、小型レーザースラスタとレーザースラスタの推力測定に必要な推力測定スタンドの設計製作を行い、小型レーザースラスタの予備評価までを実施したが、試験装置のうち、スラスタの推進剤を加熱する加熱用ヒーターに問題が見つかり、レーザースラスタの推力計測はH25年度に延期してすることとしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、H24年度に構築した小型レーザースラスタ試験システムを用いて、小型レーザースラスタの推力特性の把握と、推力発生メカニズム解明へ向けた試験を実施する。 H25年度の具体的な実施項目を以下にまとめる。 1)推力特性の把握:ターゲット厚さ、焦点距離、レーザーパワおよび環境条件(真空度や推進剤温度)が推力に与える影響を評価する。推力特性は、レーザーパワ密度や推進剤までの焦点距離に強く依存することが予想されるため、これらの推力に与える影響について調査する。また、単位時間あたりの重量欠損も評価して、スラスタの比推力特性も調べる。 2)コイルマグネット/静電アクチュエータを利用したスラストスタンドによる推力ノイズ測定:ある種のミッションでは、姿勢制御用スラスタの推力安定性が求められる。推力ノイズは、推力の時間履歴をFFT解析する事で得られるので、推力評価が順調に進むようならば測定を試みる。 3)推力発生メカニズムの解明:レーザーを推進剤ターゲットに照射中に発生する原子放射を直接確認するなどの各種測定(粒子、プラズマ、温度等)を行い、これらの計測データを基に推力発生メカニズムを解明する。 4)システム化検討:本提案によるレーザースラスタの実現可能性や、衛星姿勢の精密制御用スラスタとしての実現性をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、試験装置のうち、スラスタの推進剤を加熱する加熱用ヒーターに問題が見つかったため、温度調節機能を付加して再設計した上でH25年度に再製作することが必要になった。このため、加熱用ヒーター部の製作費(40万円)をH25年度に繰り越すこととした。同ヒーターの製作をH25年度初頭に実施し、その後は当初の予定どおり研究を進めることで研究目的の達成を目指す。
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Research Products
(5 results)