2012 Fiscal Year Research-status Report
離島周辺海域における黒潮を利用した海流発電の適地のマッピング
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24656537
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山城 徹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20158174)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 黒潮 / 海流発電 / トカラ海峡 / 口之島 / 中之島 / 諏訪之瀬島 / ADCP現場観測 / DREAMS海況予測結果 |
Research Abstract |
本研究では、九州南方のトカラ列島において黒潮を利用した海流発電の適地を明らかにする。さらに、期待しうる発電量(ポテンシャル)を離島毎に算定し、離島の事情を考慮したエネルギー利用方法を検討する。 海洋情報研究センターが作成した黒潮流軸データセット(1955年~2011年)と鹿児島大学水産学部が2005年~2007年に種子島と奄美大島の間にあるトカラ海峡を横断する線上で測定したADCP流速データを解析した。その結果、トカラ海峡が黒潮を利用した海流発電の最適地であることを明らかにした。さらに、口之島と中之島では、黒潮の強流帯が沿岸近くに存在していることも明らかにした。 次に、2012年9月4日~5日に口之島と中之島沿岸でADCP流速の現場観測を実施し、口之島と中之島沿岸域における海流発電の適地の絞込みを行った。その結果、口之島北端と中之島南端の水深60m以浅の海域において、0.8m/s以上の流速が水平方向に約1.5kmに渡って分布する海流発電の適地をみつけることができた。 さらに、九州大学応用力学研究所で開発された数値モデル(DREAMS)の海況予測結果を基にして、口之島と中之島周辺の黒潮エネルギー密度の時間変動を調べた。その結果、MCT社のSeaFlow(300kW装置、ローター直径11m)が理想的に稼動した場合、発電可能日数が口之島で280日、中之島で340日あることを示唆した。すなわち、口之島では年間65万kW、中之島では年間110万kWの発電が可能であり、口之島88世帯と中之島97世帯で使用する電力をすべて賄うことができることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、口之島と中之島周辺を流れる黒潮のADCP観測と流動数値実験を実施し、これらの島で海流発電の適地をみつけることを計画した。さらに、期待される発電量を算定し、口之島および中之島の特性に応じた海流エネルギーの利用方法を検討することも計画した。 平成24年度については、研究を計画通りに遂行できた。トカラ海峡が黒潮を利用した海流発電の適地の1つであることを文献調査によって明らかにした。さらに、トカラ海峡の口之島と中之島沿岸域で海流発電の適地を現場観測によって絞込みことができた。また、MCT社のSeaFlowを利用した場合に期待できる年間発電量をDREAMSの海況予測結果を基に推算することができた。現在、口之島、中之島、諏訪之瀬島が所属する十島村役場で各離島の特性を調査し、口之島および中之島の離島特性に応じた海流エネルギーの利用方法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成25年度は、諏訪之瀬島と奄美大島を流れる黒潮のADCP観測と流動数値実験を実施し、これらの島での海流発電の適地をみつける。さらに、海流発電の適地で期待できる年間発電量を算定し、島の特性に応じた海流エネルギーの利用方法を検討する。最終的には、口之島、中之島、諏訪之瀬島および奄美大島等が存在している九州南方海域において、黒潮を利用した海流発電の適地をマッピングする。 現在、平成24年度の研究結果を取りまとめ、土木学会論文集B3(海洋開発)特集号 (Vol.6、No.2)に投稿している。一次審査は合格し、現在は二次審査中である。この二次審査に合格すれば、第38回海洋開発シンポジウムにおいて、本研究課題の成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度実施した現地観測にかかる旅費が当初の予算よりも安く対応できたため未使用金8,317円が生じた。平成25年度は未使用金を含めて、508,137円を使用する。その内訳は次の通りである。 消耗品費については、データ解析用パソコン購入費とADCP観測の傭船料として128,317円を計上する。旅費については、諏訪之瀬島と奄美大島のADCP観測旅費、第38回海洋開発シンポジウム(2013/6/27-6/28、鳥取県米子市)参加旅費として180,000円を計上する。また、諏訪之瀬島と奄美大島のADCP観測補助費と測定データ整理費として、120,000円の人件費・謝金を必要とする。その他としては、論文投稿費30,000円と観測測器の諏訪之瀬島と奄美大島への運搬費50,000円を計上する。
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