2012 Fiscal Year Research-status Report
キレート錯体化と電気透析法を利用した金属の選択的分離
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24656549
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯塚 淳 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70451862)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 選択的分離 / キレート剤 / バイポーラ膜 / 電気透析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、正電荷を有する金属イオン同士を容易に分離することができる金属イオンの新たな選択分離方法を開発することにある。バイポーラ膜を利用した電気透析と金属の錯体化を組み合わせることで、錯化剤やpH調整剤の消費のない金属の選択的分離技術の開発を行う。 本年度は、まずリチウムとコバルトの混合溶液を対象とし、キレート剤としてEDTAを選択することで、バッチ式およびセミバッチ式の電気透析実験を各種実験条件のもとで行った。その結果、まずバッチ式での試験より、リチウムとコバルトの選択的分離が予想通りに行えることを確認した。同時に、イオン交換膜への金属イオンの収着が無視できない量で生じることを確認した。続いて行ったセミバッチ試験により、リチウムとコバルトの連続的分離試験を行った。連続運転を続けるうち、イオン交換膜への金属イオンの収着は飽和し、継続的に金属イオンの選択的分離が行えることを確認した。また、それぞれの金属イオンの回収セル中では各金属イオンの濃縮が可能であることも確認した。これらの成果は学術論文としてまとめ、投稿し、受理された。 続いて、3成分以上の金属混合溶液を対象とした実験を行った。リチウムイオン電池処理において混在する可能性が高い元素として、マンガンおよびニッケルをまず選定した。リチウムとコバルトに加え、第3元素としてマンガンが共存する場合とニッケルが共存する場合の2通りにおいて、分離実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。電気透析実験では、リチウムとコバルトの2元系の実験を中心に進めた。イオン交換膜への金属イオンの収着が無視できない量であったため、それを精査するために、2元系での実験条件を増やし、また、セミバッチでの連続分離実験を行った。その結果、連続運転によって定常に達することでイオン交換膜への収着は問題なく、金属分離を連続的に行えることが明らかになった。3元素以上が共存する系としては、第3の元素としてマンガンあるいはニッケルを選択し、順調に実験を進めている。 一方、既存技術との比較とプロセス評価についても、既存のリチウムイオン電池のリサイクル技術に関してレビューを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の金属イオンを含んだ溶液は多数想定されるため、廃リチウムイオン電池由来の金属混合溶液を想定した現在の系に加え、その他の対象を実験していく。3元触媒の処理液、液晶パネルからのインジウム、錫の回収、半導体からのガリウムの回収、コンデンサからのタンタルの回収、超硬工具からのタングステンの回収等への適用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品としては、電気透析実験に必要となる各種膜(陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、バイポーラ膜)、各種金属標準試薬類、組成分析及び実験操作のためにマイクロピペットや各種樹脂製及びガラス製の実験器具を購入する。 旅費としては、情報収集のための国内学会(化学工学会)参加旅費等が必要となる。 分析のための分析補助員の雇用のため、謝金が必要となる。
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