2012 Fiscal Year Research-status Report
バイオマス廃棄物を利用したセシウムの吸着・除去剤の開発
Project/Area Number |
24656551
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
井上 勝利 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (90039280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川喜田 英孝 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30367114)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | セシウム / 放射性元素の除去 / 吸着 / バイオマス / 水環境 / 柿タンニン / 茶葉 / 微細藻類 |
Research Abstract |
代表的なポリフェノール化合物である柿タンニンを多く含む柿渋抽出物ならびにカテキンを多く含む茶葉粉末といったバイオマスの原料を濃硫酸を用いて縮合架橋することにより吸着剤を調製した。また油脂を抽出した後の微細藻類廃棄物を用いて同様な操作により別のタイプの吸着剤の調製も行った。 いずれの吸着剤においてもセシウムをナトリウムに比べてより選択的に吸着することが明らかとなった。吸着速度は迅速で瞬間的に平衡状態に達した。吸着等温線の評価により、これらの吸着剤は現在実用的に使用されているゼオライトには及ばないものの、それに近い最大吸着量を発現することが明らかとなった。 吸着量に対するpHの効果より、いずれの吸着剤においてもセシウムは陽イオン交換反応により吸着されていると推察された。すなわちポリフェノール化合物を含む吸着剤ではフェノール性水酸基の水素原子がセシウムに対して陽イオン交換反応を行うとともに、隣接の水酸基の酸素原子が配位することにより安定な5員環キレートが形成されると推察された。また微細藻類廃棄物の吸着剤では、これを構成するタンパク質の有する硫黄や窒素といった、いわゆるソフトなルイス塩基として働く原子を有する残基を持つアミノ酸がソフトなルイス酸であるセシウムにより選択的に配位することによりセシウムに対して選択的な吸着が起こると推察した。 本研究の一部は平成24年5月18日の日刊工業新聞に報道され、いくつかの企業からの問い合わせを受けた。その中の群馬県太田市のヒフミ産業(株)とは共同研究を実施することとなり、平成24年11月16日に同社との共同の特許を出願するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発されたバイオマスの吸着剤は吸着容量が現在実用化されているゼオライトに迫るものであり、ナトリウム等の他の競合元素に対しての選択性も大きい。これらは当初の予想をかなり上回るものであった。また廃棄物に近い安価な原料からシンプルな方法により製造できるため低コストであり、実用化も期待できる。これまで接触のあった企業からも高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先に得られた吸着剤によるバッチ実験の成果に基づき、これらを充填したカラムによるセシウムの連続吸着ならびにナトリウムからの分離の研究を行う。 吸着剤の関しては木質や稲藁、麦藁に含まれるリグニンに注目し、これにカテコールやピロガロールの官能基を固定化したリグノカテコールやリグノピロガロールの吸着剤を調製し、セシウムに対しての吸着特性を研究する。 またセシウム以外の放射性元素であるストロンチウムにも注目し、ミカンの搾汁残渣やアオサ等の海藻廃棄物によるストロンチウムの吸着についても研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究においてそれなりの成果が得られたので、国内および国外の学会において研究成果を公表する。そのための旅費に本研究費を使用する。実験にはアルバイトの学生を雇用するため、そのための謝金を本研究費より支払う。
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