2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656553
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
古屋仲 茂樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (60357035)
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Keywords | 廃棄物再資源化 / 廃棄物処理 / 環境技術 / 貴金属 / 浸出 |
Research Abstract |
本研究では毒・劇物を使用しない穏やかな条件下で貴金属を溶解させることで、リサイクル現場で活用可能な安全かつ高効率な貴金属溶解技術の開発を目指している。今年度は、湿式粉砕過程における基礎的溶解特性の解明を目的として、前年度に引き続き、金、パラジウムのメタル粉を0.5mol/dm3の濃度の希塩酸と二酸化マンガンに混合して、所定時間撹拌混合させてこれら貴金属の浸出挙動を調べた。今年度中に得られた主な結果は以下の通りである。 (撹拌強度の影響)貴金属の浸出速度について遊星ボールミルを用いた場合とボールミルを用いた場合を比較した結果、遊星ボールミルを用いた方が浸出速度は高く、最終的な溶解量も高いことが判った。また、通常のボールミルを用いた場合、ボールの充填量の増加に伴いAuの浸出率は増加した。ボールの充填によってよく撹拌された二酸化マンガンの溶解促進(塩素ガスの発生促進)、Auの微粉砕や活性向上が起こり浸出率が増加したことが示唆された。 (Cl-濃度の影響)0.5 mol/dm3の塩酸にNaClにより錯体形成剤であるCl-を供給した浸出液を用いた溶解試験を行ったところ、NaCl2gを添加した系において、浸出時間2時間でAuの浸出率が100%(添加なしでは3時間で70%)となり、NaClにより浸出液中のCl-濃度を増加させることが浸出速度の向上につながることが判った。 (電子基板の貴金属の溶解)電子基板に含まれるAu及びPdの溶解法の検討として、破砕・物理選別等で貴金属・レアメタルを一次濃縮した試料を対象に浸出実験を行ったところ、多量に存在する銅やニッケルなどの溶解に塩酸が消費され、貴金属の浸出速度は大きく低下した。このことから本溶解法の前処理として銅などの金属を十分に除く必要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は一部に若干の遅れがあるもののおおむね順調に進展している。その理由は以下の通りである。 今年度は、前年度に引き続き、①貴金属の基礎的特性の解明、②白金と活性金属の合金化処理について検討するともに、新たに③電子基板に含まれる金、パラジウムの溶解法について検討した。その結果、①貴金属の基礎的特性の解明については、上記の例に示したような新たな知見を得ることができ、希塩酸によるAuとPdの基礎的溶解特性について、所有する機器を用いた実験で確認可能なほぼすべての事項を明らかにすることができたと考えている。また、③電子基板に含まれる貴金属の溶解法についても、一次濃縮に必要な破砕機の選定や静電選別時の操作条件などの基礎データを蓄積することができ、今後の研究の遂行にとって有意義な成果を得ることができた。一方、②白金と活性金属の合金化処理については、白金の浸出率向上に繋がる化合物の絞り込みができておらず今後の研究の加速が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の検討項目とその推進方策は以下の通りである。 白金と活性金属の合金化処理に関する検討として、前年度に引き続き有望な化合物の絞り込みを行う。この合金化処理について最も優れた効果が見られた系に対して、マンガン酸化物を混合し希塩酸中で湿式粉砕(遊星ボールミル使用)することで、白金の浸出特性について調べる。 電子基板に含まれる金及びパラジウムの溶解法の検討として、破砕・物理選別等で貴金属・レアメタルを一次濃縮した試料に共存する銅やニッケルをあらかじめ溶解除去する方法と条件を明らかにした後、希塩酸と二酸化マンガンによる浸出実験を行う。 廃車から回収した排ガス浄化触媒を対象として、白金族元素の破砕・物理選別による一次濃縮法について検討後、メカノケミカル法による活性合金化及び希塩酸による白金族金属の溶解実験を行いその効果を明らかにする。 使用済みアルカリマンガン乾電池から正極に用いられる二酸化マンガン粉末を分離回収した後、この回収マンガン粉末を使って貴金属の希塩酸への溶解実験を行いその効果を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、研究代表者が客員教員を務めている大学において学生指導の一環として研究項目の一部を実施することが認められたこと、契約職員を公募した際に時間単価を予定よりも低く抑えることができたことから、契約職員人件費を当初見積よりも圧縮した。これに加え試薬等の消耗品費の一部を大学から支弁されたことにより助成金が余剰となり次年度に繰り越すこととなった。 次年度にはこうした大学での学生指導の予定がないため、研究の停滞を招くことがないよう、契約職員の人件費に120万円を使用する予定である。この他に粉砕機用品や試薬などの消耗品費として42万円、学会発表や各種調査などのための旅費(国内及び国外)として30万円を使用する予定である。
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