2013 Fiscal Year Annual Research Report
その場観察による剥離粒界検出を用いたステンレス鋼の照射後粒界脆化機構の解明
Project/Area Number |
24656563
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 晃 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80241545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藪内 聖皓 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70633460)
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Keywords | ヘリウム脆化 / 変形のその場観察 |
Research Abstract |
本研究ではFe-15Cr-20Niの単純三元系合金を用い、サイクロトロンでヘリウムを注入した試験片の結晶粒界でのき裂発生の挙動を調査した。試験前に引張り試験片表面における粒界の性格付けを行い、高温で一定歪み付加後に引張り試験を中断し、表面の観察を行い、その後、再度試験機に装着し、また一定歪みを付加するというサイクルを繰り返し、ヘリウム注入材において発生する粒界き裂と応力負荷方向との関係を調査した。その結果、ヘリウム注入材の550℃での試験では弾性領域から表面のランダム粒界が開口し、き裂となること、一方で整合粒界では塑性変形領域に入ってから粒界剥離が発生することなどを明かにした。このような粒界の剥離と開口によるき裂の発生は、ヘリウムを注入していない試験片では全く観察されなかった。また試験中に剥離した粒界について、それぞれ負荷応力とシュミットファクターとの関係を検討したが、粒界剥離は粒界の垂直応力に主に依存し、負荷応力に垂直なランダム粒界から剥離が発生することを明かにした。これらの成果はH25年3月に開催された国際学会で発表した。 さらにヘリウム注入材の高温下での引張り変形中の粒界き裂発生の挙動を連続的に調べることを可能にするために、真空中で微小引張り試験片表面の塑性変形や粒界き裂の発生を追跡可能なシステムを設計・製作した。これにより真空中で1300℃までの温度での引張り試験が可能で、なおかつ高温下で試験片の発熱による発光で可視光では表面が観察できない場合でも、表面の詳細な変形挙動を観察可能な共焦点レーザー顕微鏡を備えた引張り試験装置を得た。これにより、ステンレス鋼においてヘリウムによる粒界脆化が顕著に起こる500℃以上の温度環境での変形のその場観察が可能になった。現在、塑性変形によるすべり線によって発生する表面段差の解析と粒界き裂の発生挙動の解析を進めている。
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