2012 Fiscal Year Research-status Report
造影剤を用いず癌を発見するX線コンピュータ断層撮影法の開発
Project/Area Number |
24656570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神野 郁夫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50234167)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線コンピュータ断層撮影 / エネルギー分解CT / フィルタX線 / 実効原子番号 / 物質識別 / 低被曝 |
Research Abstract |
ヨウ素造影剤を用いずに癌を発見するため,実効原子番号測定を行う.実効原子番号測定には,2種のエネルギーの単色X線を用いるのが理想である.しかし,単色X線を利用するには放射光施設を用いる必要があり,一般の病院では使用不可能である.このため,我々が発明したtransXend検出器を用いて,疑似単色X線を得ることとした. transXend検出器とは,X線を従来通り電流として測定し,解析によりX線のエネルギー分布を得る検出器である.これを用いて,X線を電流測定し,エネルギー分解CTを行うことができる.解析において,二つの設定エネルギー範囲を狭くし,擬似的に2色単色X線とする.比較のため,2種のX線管加速電圧を用いるデュアルエネルギーCT測定を行い,また,2種単色X線でCT測定を行った文献値を用いた. 測定対象は軟組織を模擬したアクリルと骨を模擬したアルミニウムである.デュアルエネルギーCTでは,アクリルについて良い値を出力したが,アルミニウムについてはエネルギー分解CTよりも遙かに劣る結果であった.また2種単色X線CTは,測定対象が水であったので,理論値と実測値の差を理論値で割った,相対誤差で比較した.2色単色X線CTでは2%で,エネルギー分解CTでは4%であり,比較しうる結果である. また,エネルギー分解CTを行う際,使用しないX線を削除して被曝量を低減するため,2色フィルタX線を作成した.ガドリニウムとタングステンを薄いアクリル円盤に貼り,これをX線管出口で回転させ,フィルタX線とした.エネルギースペクトルをCdZnTe検出器で測定した.さらに,異なる種類のシンチレータを4分割フォトダイオードに装荷し,同一平面transXend検出器とした.これが,従来のX線入射方向に要素検出器を並べたtransXend検出器と同様に動作することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
白色X線をtransXend検出器で測定し,疑似2色単色X線CTのように実効原子番号測定ができた.学会・研究会で報告し,注目を得ている. 計画では初年度には固定した2種のフィルタでフィルタX線を作成することになっていたが,回転2色フィルタを工作し,フィルタX線のエネルギースペクトルを行った.これにより,第一世代CT測定はもとより,ファンビーム・コーンビームを用いる第三世代CTに対応できる.
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Strategy for Future Research Activity |
transXend検出器を用いた疑似2色単色X線CTにおいて,実効原子番号の識別能力を評価する.実効原子番号測定の目的は,正常組織の実効原子番号と異なる組織が癌組織の可能性があるので,これを発見することである.癌組織および正常組織は,患者個人個人によって,異なることが予測され,癌組織の一般的な実効原子番号という概念は利用できない,と考えるからである.しかし,癌組織と正常組織の実効原子番号の差は大きくないことも予測できる.このために,本手法の識別能力を評価することは不可欠である. 識別能力の評価のために,アクリルファントム内部に異なる密度の領域を作成し,これを測定する.具体的には,様々な濃度の寒天などを一つのファントムに配置し,それらの実効原子番号の差が識別できるか,評価する. また,2色フィルタX線を用いた場合の被曝量を評価する.フィルタを厚くすれば被曝量が減少するが,一方で検出器に到達するX線数も減少し,画像が劣化する.低い被曝量と良い画質とが共存するフィルタ厚さを求める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2色回転フィルタの各フィルタ厚さの最適値を明らかにし,それに相当する厚さのフィルタ箔を購入する. 複数の異なる密度を持つ被検出物質,たとえば密度が異なる寒天など,を含有できるファントムを作成する. 異なる種類のシンチレータ4種を一つの同一平面上に配置したtransXend検出器を作成し,それを4式並べたラインセンサを作成する.
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