2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24656576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
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Keywords | 廃熱利用 / 熱工学 / マイクロ・ナノデバイス / 半導体超微細化 |
Research Abstract |
低環境負荷なシリコンにナノ構造を施すことで、熱電変換材料としての応用可能性を見出すことを目的とし、本年度は、フォノン輸送制御のナノエンジニアリングを行ったシリコンナノ構造における熱伝導測定を行った。熱電変換材料としての可能性を引き出す鍵は、電気伝導率を損なわずに、熱伝導率を低下させることであり、熱伝導を担う格子振動の量子であるフォノンの輸送を制御することである。 当該年度は、単結晶シリコンを100 nm程度の超微細周期をもつエアブリッジ構造の形成技術の開発と、ナノ・マイクロ構造の熱伝導率を光学的手法で高信頼性を持って測定できるマイクロ時間領域熱反射測定法を確立した。シリコンナノワイヤーについて、さまざまな幅の構造について熱伝導率を測定し、ナノ構造特有のバリスティックフォノン伝導を反映した結果を室温において観測した。また、周期300nmのフォノニック結晶ナノ構造のフォノニックバンド構造を計算し、最適化設計を行って構造を作製した。ナノワイヤーと比較して明確な熱伝導率の低減を観測することができた。この結果は、熱伝導を担うフォノンの平均自由行程と同程度の寸法を有する系に特有の物理現象を含んでおり、ミクロスコピックな視点からのフォノン輸送・散乱現象に関する学術的価値の高い情報を含んでいる。現在、理論グループとの共同研究により、熱伝導低減のメカニズムに関する検討を進めており、表面散乱の効果とフォノニクスによる熱伝導制御効果についての考察を深めていく。 ナノ構造形成技術に関しては、当初の計画を上回って微細な構造に形成に成功している。周期100 nm以下のフォノニック結晶ナノ構造の形成が高い歩留まりででき始めており、本構造では世界で最も微細な領域に達している。これまでに例のない高い温度領域でのフォノニクスによる熱伝導制御が期待できる。
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