2012 Fiscal Year Research-status Report
ハシリショウジョウバエを用いた光周性の新規な順遺伝学モデルの構築
Project/Area Number |
24657007
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
近藤 周 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (90408401)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 光周性 / 概日リズム / 遺伝学 |
Research Abstract |
動物の光周性における日長測定システムは、分子メカニズムがほとんど未解明の一大テーマである。申請者の長期的目標は、順遺伝学的手法により日長測定に関わる遺伝子を網羅的に同定し、システムの全貌を一挙に解明することである。当研究課題においては、そのためのモデル生物として、光周性の順遺伝学的解析に最適と考えられるショウジョウバエ種を新規遺伝学モデル生物として確立する。 研究計画調書では、光周性幼虫休眠を起こすハシリショウジョウバエ(Chymomyza costata)を用いることを提案したが、C. costata以外にも様々な光周性行動を示すショウジョウバエ種が存在する。実際に大規模実験を行う上では、飼育の容易さが非常に重要なポイントになることから、光周性を示すショウジョウバエ種を複数飼育し、「飼いやすさ」の観点から比較検討を行った。光周性卵巣休眠を起こすDrosophila triauraria、Drosophila bifasciata、季節性体色変化を起こすDrosophila putridaを飼育・観察した。 光周性における日長測定には概日時計が関与することが示唆されている。C. costataの脳において概日ニューロンがどのような構成をしているかを明らかにするため、キイロショウジョウバエの概日時計関連タンパク(Period, Clock, Pdf)に対する抗体を用いて免疫染色を行った。Pdfニューロンの染色パターンはC. costataとキイロショウジョウバエでよく保存されていた。 GAL4/UASシステム等のツールを整備することは遺伝学モデル確率の上で必須である。ショウジョウバエ種でトランスジェニックを作成するための一連のベクターを構築した。ベクターにはPiggyBacシステムを用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C. costataは過去の報告の通り、18℃の飼育条件下で極めて明確な光周性休眠を示した。しかしながら、一世代が30日と長いこと、産卵数がそれほど多くないことから、大量飼育が困難であり、本種を用いた突然変異体スクリーニングは断念した。D. triauraria、D. bifasciataの二種は大量飼育に適するものの、卵巣休眠が外部形態としては評価できないので、スクリーニングには向いていないと判断した。 D. putridaは春・秋に生まれた個体と、夏に生まれた個体で、色彩が異なることが知られている。今回、この季節性多型が日長に依存して変化することを見出した。同種は世代時間が20日と短く、飼育も比較的容易であることから、同種を用いて光周性異常変異体のスクリーニングを開始した。これまでに、X染色体についてENU処理をした2000系統をスクリーニングしたが、まだ光周性変異体は得られていない。キイロショウジョウバエのwhite, yellow, vermilionに相当する変異体は得られており、変異原処理については方法論を確立することができた。 キイロショウジョウバエのPdf, Per, Clkタンパクに対する抗体を用いてC. costataの幼虫脳における免疫染色を行い、Pdfニューロンの走行パターンを明らかにした。Per, Clkは染色がうまく行かなかった。 形質転換ベクターとして、PiggyBacをバックボーンとするベクターを多数構築した。現在D. putridaにマイクロインジェクションを試みているが、キイロショウジョウバエと同じ方法では生存率が極めて低いことが判明した。今後方法論の最適化が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きD. puturidaを用いて光周性異常を示す突然変異体のスクリーニングを行う。 D. triauraria, D. bifasciataは、飼育が極めて容易であることから、トランスジェニックを用いた解析に適していると期待される。平成25年度は、これらの種のための形質転換ベクターを開発し、トランスジェニック系統の作出を行う。 C. costata, D. triauraria, D. bifasciataには、生息地の緯度に依存して臨界日長の異なる地域集団が存在する。昨年度、フィンランド、スイス、北海道由来の地域集団を入手したので、臨界日長の差を生むQTLの解析にむけて予備実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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