2012 Fiscal Year Research-status Report
水生菌類群集を用いた河川生態系の栄養指標に関する研究
Project/Area Number |
24657010
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 河川生態系 / 菌類 / 生物多様性 / 群集構造 |
Research Abstract |
本研究は、河川における腐食連鎖系の低次生産生物として重要性が指摘されながらも、これまで無視されてきた水生菌類に焦点をあて、その源流から下流へ至る種多様性パターンを仮説検証的に調べることで群集の維持構造の決定機構(集合ルール)や機能的役割を理解し、その成果を通じて流程に沿った生物群集を支える栄養指標を確立することを目的としている。 本年度は名取川水系の水生菌類(子のう菌、担子菌、ツボカビ、変形菌)を対象に、河川流程に沿った環境勾配と種多様性及び群集構造との関係について解析を行った。具体的には、源流から河口域に至る12地点で河床の石の上に付着している菌叢を1地点につき数カ所から採集し、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)法を用いて菌群集を把握した。その結果、秋に行った調査では下流に向かって水生菌数のα多様性は増加する一方、β多様性は減少した。この結果は当初うちたてた仮説を支持するものであり、下流に向かって有機物の種類や量が増加していることを示唆している。しかし春季の調査ではそのような流程に沿った空間パターンは検出されなかった。春季には河川水は12℃前後とまだ低く、またいずれの地点でも検出されたタクサ数が40前後と少なかったことから、春季にはまだ十分に水生菌類群集が発達していかかった可能性がある。このことは、冬期には水生菌類群集が一度リセットされることを示唆している。これら流程に伴う季節変化については、集水域の土地利用の影響などとともに、来年度にさらに詳細に解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査は予定通り実施し、期待通りの成果を上げることができた。しかし、野外調査については夏期に実施したものの、実験装置が一部流されるなどのアクシデントがあったため、十分な結果を得ることが出来なかった。これについては、次年度に再度野外実験を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
菌類の解析にあたっては、情報量が多く精度の高い次世代シークエンサーを用いた手法が近年急速に進展している。この方法を適用することにより、野外調査と野外実験で得られる試料を迅速に解析することが可能となり、目的の達成にあたって当初予定して以上の成果をあげられると期待出来る。そこで、これまで用いてきたDGGE法に加えて、次世代シークエンサーを用いた解析方法を導入して研究を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次世代シークエンサーの解析にあたっては1runあたり80万程度の経費がかかるので、そのための物品費を次年度の主な研究費にあてて研究を行う。
|
Research Products
(2 results)