2015 Fiscal Year Annual Research Report
地下性甲虫の飼育法検討及び昆虫-微生物相互作用に関する基礎研究
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24657017
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
新部 一太郎 島根大学, 生物資源科学部, 研究員 (10613961)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地下性甲虫 / 昆虫微生物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにTrechiama yokoyamaiの飼育環境下での死亡リスクについて、微生物による感染と必須栄養素の供給という2点について仮説を支持する結果が得られたが、感染すると思われる微生物と野外環境で感染を抑止している微生物を単離同定することも継続的に試みており、今年度は各種選択培地で単離培養を行った。生息地土壌を接種源として単離した微生物の抽出物を飼育系に適用して飼育を行ったが、これまでの試験で見られた明瞭な生存期間の延長は確認できなかった。また虫体抽出物を混合した培地で単離した微生物を虫体に再接種しても死亡率は変わらなかった。したがって現時点で本種の死亡リスクと関連している微生物は単離できていないと考えられる。 本種の保存的な飼育には成功していることから、続いて繁殖に関する試験を行った。野外個体を各時期に採集して解剖し、卵巣の発育時期を整理したところ5-10月に卵巣の発育した個体が多く、2-4月では発育の見られない個体が多かった。また、発育初期の卵はほとんど見られず、成熟卵に近い状態か、未発達かに二分された。産卵期は比較的長期にわたると思われるが、新成虫の羽化が10-12月ごろに観察されることから、羽化には同調性があるのかもしれない。野外個体を採集し雌雄を2週間同居させたのちに別離して継続的に飼育し、一定期間後に卵巣の発達状態を評価したところ飼育下に移して4か月以上経過した個体では卵巣発育がみられなかった。この傾向は飼育前に低温刺激を行っても変わらなかった。飼育ケージを赤外線カメラで撮影して行動解析を行うと、同居後多くのケースで交尾行動が見られたが、床材を掘るなどの産卵に関連する行動を見いだすことはできなかった。野外と飼育環境での傾向が異なることから現状の飼育環境は死亡リスクの管理は可能なものの繁殖環境に関してはまだ十分ではないと思われ、今後も検証を行っていきたい。
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