2013 Fiscal Year Research-status Report
絶滅寸前のカモシカ地域個体群の新たな個体数センサス法の開発
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24657021
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
安田 雅俊 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (40353891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八代田 千鶴 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (20467210)
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Keywords | 野生生物 / 保全生態学 / 九州地方 / ニホンカモシカ / 絶滅危惧種 / 特別天然記念物 / 個体識別 / 塩場 |
Research Abstract |
本課題では、日本固有の大型草食獣で国の特別天然記念物のカモシカ(偶蹄目ウシ科)について、絶滅が危惧される九州地方の地域個体群の保全のために、現在の極低密度下でも有効な新しい個体数推定法を確立することを目的としている。カモシカは、顔面の紋様の個体差に基づいて個体識別ができ、角から年齢査定ができることから、自動撮影法を用いた個体識別に基づく新たな個体数推定法の開発のための調査の効率化に取り組んだ。①撮影効率の向上を期待して、誘引物として人工の塩場(3%食塩水、4倍希釈した醤油)および天然に湧出する鉱泉を用いた調査を、これまでの調査でカモシカが自動撮影できた場所(宮崎県高千穂町内)において実施したが、限られた期間では顕著な効果は認められなかった。②1km2あたり1~4台の密度で自動撮影カメラ(ビデオカメラを含む)を配置し、必要に応じてカメラの配置を変えながら、継続的に調査を行ったところ、これまでの2年間で計195枚のカモシカの静止画と13本の動画を得た。極低密度状態の九州のカモシカについて、短期間に高い確率でその生息を確認するためのカメラ設置場所の選定基準を明らかにできた。③得られた画像から、複数のカモシカ個体を識別することができた。九州においてカモシカの主要な死亡要因のひとつとされる重篤な皮膚病(ダニ疥癬症)に罹患した滅失個体が高千穂町内から報告されたが,その近隣で撮影された個体からは疥癬症の兆候は認められなかった。これにより、疥癬症による死亡はあるものの、感染の広がりは限られていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工の塩場や天然の鉱泉によってカモシカを自動撮影カメラの前に誘引することは困難であることが明らかとなり,それ以外の方法,すなわち,カモシカが選好する微小ハビタットにカメラを仕掛けることがより効率的であることが明らかとなった.このことは,今後の研究の方向性を決める重要な成果である.また,地元の文化財担当者から情報を得ることができるようになり,重篤な皮膚病に罹患したり,錯誤捕獲された個体の情報が寄せられた.重篤な皮膚病で死亡した個体の発見場所の近隣に仕掛けたカメラで健全なカモシカの個体が撮影されたことから,疥癬症による死亡はあるものの,感染の広がりは限られていることが明らかとなった.このことは,本研究の目的に沿った成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
自動撮影カメラでえられた画像データを解析し,外的特徴に基づいて個体識別したカモシカの個体リストを作成する.調査地域におけるカモシカの空間分布パターンを明らかにし,個体数推定の精度を向上させるための手法を開発する.論文の執筆と成果の発信を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度途中の共同研究者の異動により,毎月の野外調査にかかる旅費が減少したため.ただし,このたびの異動によって共同研究者がかかわる調査研究項目の進展が大きく影響を受けることはなかった. 異動した共同研究者が本研究の推進のため今年度必要とする旅費ならびに成果の発信の費用等に充当し,適切に使用する.
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