2013 Fiscal Year Annual Research Report
プロテインホスファターゼが標的とするタンパク質の網羅的解析
Project/Area Number |
24657033
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 陽一朗 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (80432590)
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Keywords | ホスファターゼ / 脱リン酸化 / リン酸化 / ペプチド / タンパク質 / イネ培養細胞 |
Research Abstract |
本研究ではホスファターゼが脱リン酸化する基質を特定し、植物における脱リン酸化反応機構の理解を目的としている。初年度は、HPLCを用いたリン酸化ペプチド精製系を、Agilent Technologies社の技術スタッフの協力を得て行った。細胞からのリン酸化ペプチド精製には、計画当初は遺伝的冗長性の低い苔類ゼニゴケを用いる予定であったが、実験系確立までの迅速性を優先するためにイネ培養細胞とプロトプラストを用いた。リン酸化ペプチド精製カラムは、Titansphere Tio HPLCカラム(GL Science社)が有効であることを確認した。2年目は、リン酸化ペプチドの同定数を上げるためにカラムに供するサンプル濃度を上げて検証したが、カラムが詰まり精製そのものがうまく行かないことが判明した。そこでHPLCによる精製系の代わりに、PhosTio(GL Science社)とPolyMac(AMR社)を用いてリン酸化ペプチドを精製し、それぞれ771個、641個のリン酸化ペプチドを同定した。またイネ培養細胞を用いた場合は、同定されるリン酸化ペプチドは熱ショックタンパク質など細胞内に多量に存在するタンパク質由来であったのに対し、プロトプラスト化した細胞では、より微量なタンパク質も含めて同定される数が増加した。動物細胞を用いた研究結果と総合すると、植物細胞を用いたリン酸化ペプチドの精製には、細胞壁などの成分が阻害する可能性があり、タンパク質調製の段階での工夫が必要であることが分かった。さらに防御応答を引き起こすイネいもち病菌の構成成分キチンを処理すると、PhosTioでは913個、PolyMacでは802個のリン酸化ペプチドが同定され、リン酸化が誘導されるタンパク質が増えることが示唆された。今後はこのタンパク質が実際にリン酸化誘導されるかを検証し、論文として報告する予定である。
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