2012 Fiscal Year Research-status Report
受容体複合体再構築系を用いたホルモン輸送体のスクリーニング
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24657040
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
瀬尾 光範 独立行政法人理化学研究所, 適応制御研究ユニット, ユニットリーダー (00512435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / 輸送体 |
Research Abstract |
本年度は、新たなホルモン輸送体のスクリーニングをおこなうための受容体センサーの構築に取り組んだ。これまでにCOI1受容体がジャスモン酸-イソロイシン結合体(JA-Ile)に依存してJAZタンパク質と相互作用する事が報告されている。このJA-Ile依存的なCOI1とJAZの相互作用は、酵母two-hybrid系により再構築できる事が報告されており、輸送体スクリーニングのセンサーとして用いる事ができると期待される。しかしながらこれまでの報告とは異なり、複数の異なるベクター系を用いてもJA-Ile依存的なCOI1とJAZの相互作用を検出する事ができなかった。同様にオーキシン(インドール酢酸;IAA)について報告されている受容体TIR1/AFBとAux/IAAのIAA依存的な相互作用も、酵母two-hybrid系で再構築する事ができなかった。これらの事からJA-IleおよびIAAの輸送体スクリーニングがこの時点では不可能あると判断し、他のホルモンに関する新たなスクリーニングを計画した。これまでにアブシシン酸(ABA)とジベレリン(GA)の取り込み輸送体のスクリーニングをおこなったが、排出輸送体のスクリーニングはおこなっていなかった。酵母two-hybrid系によるGA依存的なGA受容体複合体形成をネガティブな選択マーカー(相互作用が起こると酵母が死ぬ)で検出する事を試みたが、機能しなかった。そのため、GA依存的な複合体形成をポジティブに検出する系において、GA排出輸送体のスクリーニングをおこなった。通常、輸送体を含まない酵母細胞においては1μMのGA 存在下で受容体複合体の形成が有為に誘導されるが、シロイヌナズナcDNAライブラリーを導入し、その条件での相互作用が阻害されるクローンを選抜した。現在までにおよそ4000クローンについて選抜をおこない、約30の陽性クローンを得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、構築を予定していたJA-IleおよびIAAの受容体センサーが、過去の論文による報告の通りに機能しなかったことにより、計画の大幅な変更を余儀なくされた。当初は、まだこれまでにスクリーニングをおこなっていなかったJA-Ileの輸送体と、可能であればそれに引き続きIAA輸送体のスクリーニングを計画していた。しかしながら何種類かの異なるベクター系を用いた場合にもこれらの受容体センサーは同様に機能せず、この問題については現在も解決できていない。このため、JA-IleおよびIAA輸送体のスクリーニングはさしあたり見送り、GAおよびABA排出輸送体のスクリーニング系立ち上げに切り替えた。しかしながら今度は、GAおよびABAの排出輸送体のスクリーニングに関してネガティブな選択マーカーが機能しなかったため、ポジティブな選択マーカーによるネガティブなスクリーニングをおこなわざるを得なかった。このような状況から、当初の計画から比べてスクリーニングを開始するまでに予想以上に長い期間を要してしまった。また、通常のポジティブなスクリーニングと異なり1クローンごとに個別の選別が必要であり、効率の良いスクリーニングの作業が行えていない。現在までに約4000クローン程度しかスクリーニングがおこなえていない。しかしながら、そのうち約30クローンについては1μMのGA 存在下でのGID1とDELLAタンパク質の相互作用が阻害されるので、GA排出輸送体をコードするcDNAが導入されていると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は継続してGA排出輸送体のスクリーニングを継続する。スクリーニングに用いているcDNAライブラリーは約10,000の独立した完全長cDNAライブラリーをもとに構築したものなので、通常の平均化していないライブラリーを用いる場合に比べれば効率よくスクリーニングの網羅率を高められると考えられる。当面は約20,000クローン程度を目標にスクリーニングをおこない、陽性クローンについては随時再現性を確認し、導入されたcDNAの特定を進める。得られたcDNA配列から輸送体としての機能が予想されるものについては、T-DNA挿入ラインを入手し、表現型の観察をおこなう。さらに受容体センサーを用いた間接的なアッセイではなく、より直接的なアッセイにより、候補タンパク質のGA排出輸送体としての機能を明らかにする。これまでのGA取り込み輸送体の場合には、輸送体を発現させた酵母に取り込まれたGAをLC-MS/MS分析する事で、直接的な活性を検出してきた。しかしながら今回は排出輸送体なので、新たなアッセイ系の確立が必要とされる。また、ABAに関しても同様に排出輸送体のスクリーニングをおこなう。さらにJA-IleとIAAに関してはスクリーニングに使用可能な受容体センサーの構築をおこなう。これらの受容体センサーが予想通りに機能しなかった理由の一つとして、受容体との相互作用によりJAZもしくはAux/IAAタンパク質が植物体内で起きるのと同様に、酵母においてもプロテアソーム系で分解されてしまうために、相互作用の検出が不安定になることが考えられる。今後部分的な配列を用いるなどして、相互作用の検出を検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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