2012 Fiscal Year Research-status Report
地衣類を構成する共生菌および共生藻に生じる形質変化と遺伝子発現
Project/Area Number |
24657042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
大村 嘉人 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (40414362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
颯田 葉子 総合研究大学院大学, その他の研究科, 教授 (20222010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地衣類 / 共生 / 進化 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
平成24年度はサブテーマ「野外の地衣体における湿潤時と乾燥時の遺伝子発現の違い」を中心に研究を実施した。地衣類は、光照射下において湿潤時に光合成や呼吸などの生理活性が高く、乾燥すると生理活性がほとんど停止状態になることが知られている。一方、地衣体の成長のためには乾湿サイクルが必要であり、常に湿潤状態となっている培養条件下においてはほとんどの種で再合成がうまくいかない。このように、乾湿サイクルが地衣類の生理的活動および成長などの形態形成に及ぼす影響は大きく、これに伴って遺伝子発現に違いが見られることが予想される。言い換えれば、地衣類は乾湿サイクルに適応して進化してきたグループであり、乾湿時にオン・オフされる遺伝子群の中に共生に関わる遺伝子が含まれる可能性が高いと考えている。本研究では、野外から採集したサルオガセのサンプルを用いて、湿潤および乾燥時の地衣体をそれぞれ光照射下に置いたのち、両者の遺伝子発現の違いを次世代シークエンサーによって解析を行った。得られた7011配列を解析した結果、1630配列が湿条件下で特異的であり、2568配列が乾燥条件下で特異的であった。BLAST検索によって、それらには、光合成、ペントースリン酸経路、タンパク質合成、シグナル伝達に関連する遺伝子などが見出された。リアルタイムPCRによって光合成関連遺伝子を定量したところ、それらの多くは湿条件下で多く発現していた。 培養による再合成実験については、サルオガセから共生菌・共生藻の単離培養を行い、それぞれの培養株を混合して、発生初期段階の地衣体の再合成に成功した。それらを回収してRNAを抽出し、cDNAを作ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、地衣類における遺伝子発現を次世代シークエンサー等を活用して解析するという世界的にも最先端の研究分野に取り組んでいる。野外サンプルおよび培養サンプルを用いた実験系を計画し、RNA抽出からcDNA作成、次世代シークエンサーによる解析、リアルタイムPCRによる発現量の定量といった一連の実験系の確立に成功した点では一定の成果を得られたと考えている。しかし、次世代シークエンサーによる遺伝子発現解析については、使用している機器(GS Jr, Roche)の性能が不十分であることが明らかになり、期待していただけの成果は得られていない。今後super SAGE法を組み合わせるなどして、網羅的な遺伝子発現解析ができるように実験系を改良していきたい。 一方、培養株による地衣体再合成実験系から得られるトータルRNA量が十分に確保できないことから複数の遺伝子実験系を組むことができないことも一つの障害となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の障害となっているのは大きく分けて、①使用している次世代シークエンサー(GS Jr, Roche)の性能および精度が十分ではない、②複数の遺伝子実験を行うためにはトータルRNA量が十分に確保できない、③得られる実験結果の情報量が多く解析に時間を要する、といった点である。研究を推進するために、①については、superSAGE法を組み合わせる解析を考えているが、トータルRNA量を50倍(1μg)確保する必要があり、サンプルの確保に時間を要する。②については、大量培養を試みるとともに、少量RNAから可能な実験系についても検討する。③については必要に応じてバイオインフォマティクス分野の専門家との連携も視野に入れ解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)