2012 Fiscal Year Research-status Report
非視覚性の光受容ニューロンにおけるオプシンの機能分化と新たな光シグナリング経路
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24657052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 大輔 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60376530)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / 光生物学 / 網膜 / 概日時計 / オプシン / OPN4 / ipRGC |
Research Abstract |
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、以下の成果を得た。 概日時計を明暗サイクルに同調させる「概日光受容」は、様々な動物において見出される普遍的な機能である。哺乳類の概日光受容は網膜の光感受性神経節細胞ipRGCが担うが、私共の研究成果から、ipRGCの光受容蛋白質OPN4が新たなシグナル伝達経路を駆動する可能性が浮かび上がってきた。本年度はまず、発光レポータ遺伝子を発現する培養細胞をモデル系として、OPN4シグナルを担う候補因子群について、それぞれの機能阻害実験を行った。このうち候補G蛋白質サブタイプについては、当初計画していた薬理学的阻害が困難であることが判明した。そこで分子遺伝学的な手法(RNAi)を用いた実験系に切り替えて機能阻害実験を行ったところ、このG蛋白質サブタイプがOPN4により光活性化されることが強く示唆された。次に、このシグナリング経路がipRGCにおいて実際に作動しているかどうかを明らかにするために、ウイルスベクター等を用いてレポータ遺伝子(ルシフェラーゼ改変体)をipRGCに一過的に導入することを試みた。しかしこれらの手法では、OPN4シグナリングを発光イメージングにより検出するためには、レポータ遺伝子の導入効率が不十分であることがわかった。そこでOpn4遺伝子プロモーターとCre/loxPシステムを利用した遺伝学的手法により、レポータ遺伝子をipRGC特異的かつ高効率で発現するトランスジェニックマウスの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞をモデル系としたOPN4シグナリング解析は、研究実績内容に記載した通り、ほぼ順調に進展している。また、マウス生体の網膜を用いたipRGCのシグナリング解析は、当初の実験手法では研究目的の達成が難しいことがわかったため、実験手法を変更することにより問題解決を図った。これら2つの項目の研究に重点をおいたため、もう一つの課題(哺乳類では進化的に失われているOPN4重複遺伝子の機能解析)は翌年度も続行することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に完了しなかった下記の研究項目を遂行し、さらに、交付申請書に記載した平成25年度の研究計画を進める。 【脊椎動物の2種類OPN4重複遺伝子の機能分化と生理的意義の解明】多くの脊椎動物は2種類のOpn4重複遺伝子(Opn4-1およびOpn4-2)をもつが、哺乳類は例外的にこのうち片方(Opn4-1)を失っている。私共は培養細胞において、ニワトリ由来のcOpn4-1とcOpn4-2が互いに異なる光応答を引き起こすことを見出している。Opn4重複遺伝子の機能分化がどのような生物学的意義を持つのかを検証するため、マウスOpn4遺伝子のプロモーター制御下でcOpn4-1もしくはcOpn4-2遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(cOpn4-1 TgおよびcOpn4-2 Tg)系統を樹立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度から平成25年度に繰り越した助成金は、上記の2種類のトランスジェニックマウス(cOpn4-1 TgおよびcOpn4-2 Tg)系統を樹立するため、全て物品費に充当する。平成25年度分として請求した助成金は、交付申請書に記載した計画通りに使用する。
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