2012 Fiscal Year Research-status Report
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24657054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 淳 北海道大学, 情報科学研究科, 特任講師 (20392061)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超音波発声 / 聴覚皮質 / マウス / 老化促進モデルマウス / 神経科学 / 神経行動学 / 動物音響学 / 電気生理学 |
Research Abstract |
本研究では,複雑な時系列規則を持ったマウスの超音波発声の神経機構を明らかにすることを通して、ヒトの言語に見られるような高度な音声情報処理能力の脳機構に迫るとこを目指している。 本年度は,まず超音波発声を録音するために必要な超音波マイクとその録音システムを購入し,そのセットアップを行った.これを用いて,BALB/cとC57BL6/Jマウスのオスがメスの尿の匂いを嗅いだ際の超音波発声を録音した。さらに,通常老化の約2倍の速さで老化が進むことが知られている老化促進モデルマウス(SAMR1, SAMP1, SAMP8, SAMP10)の超音波発声についても収集を行った。各系統における超音波発声のデータのサウンドスペクトラムを計算し,そのパターンを詳細に解析した.複雑な時系列を形成している音要素を抽出し、その時系列規則を推定した。さらに、個々の音要素を構成している音響要素を分類し、それぞれの音要素がどのような音響要素の組み合わせからなっているか分析した。その結果、音要素の組み合わせ、音響要素の組み合わせともに系統差があることが分かった。 マウスの歌は,いくつかの音響要素が集まって音要素を構成し,その音要素の時系列パターンによって特徴づけられている.上記の結果は,そのそれぞれの階層において系統差間に違いがあることを意味しており,遺伝的な違いによってマウスの超音波発声のどの部分が影響を受けるのかという点において基礎的な知見を提供できた.今後の遺伝子組み換えマウスを用いた神経科学的研究へと繋がる重要な結果といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マウスの超音波発声を十分な量録音することができ、解析の結果として各レベルにおける系統差を明らかにすることができた。当初は、BALB/cとC57BL6/Jマウスだけを想定していたが、追加で老化促進モデルマウスの超音波発声についてもデータを集めることが出来た。これは、老化研究を見据えた場合、非常に有意義であったと考えている。当初は、発声を司る運動皮質のニューロン活動を記録する計画になっていたが、それを補えるほどの価値があると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られたマウスの各系統における超音波発声のデータを詳細に解析し、各系統における音要素とその系列規則、音響要素とその組み合わせを自由に変更させることのできる人工合成音を作成するためのシステムを構築し、電気生理実験のための音刺激の作成を行う。次に、麻酔下のマウスの聴覚皮質から多点電極によって多数の神経細胞の活動を記録し、これらの人工音に対する応答を詳細に調べることにより、聴覚野のそれぞれのニューロンの音声情報処理様式を解析する。これにより、マウスの聴覚野において超音波発声がどのように処理されているのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし.
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