2012 Fiscal Year Research-status Report
暗闇で何を見ているのか?深海生物の視覚行動学的研究
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24657057
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
鶴若 祐介 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究副主任 (30533856)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 深海生物 / 行動 / 色彩感覚 / 光刺激 |
Research Abstract |
深海生物がその生息地である暗黒世界で“何”を見ているのか、行動学的視点で研究を行っている。 【深海魚の視覚における色彩“学習”実験】 初期候補の実験魚として深海ヤマトコブシカジカ (Malacocottus gibber) を用いる。実験は海洋研究開発機構・深海総合研究棟の1℃低温実験室において行っている。視覚刺激として、着色したABS樹脂 (Acrylonitrile、ButadieneStyreneを共重合合成させた樹脂)を直径5cmに加工し、立方体として用いている。各色の立方体を20 cm間隔で同時に水面に釣り糸で垂直呈示し、一番好む色彩を解析している。次いで、その立方体をつつくもしくは引っ張るとその報酬として給餌し、弁別学習をさせる。刺激呈示開始後1~2分以内に立方体をつついた場合を正答とし、1週間以上連続して正答率が8割以上となった個体を行動実験に供する。各立方体で最もつつく率の高かった数色を正刺激、それ以外を負刺激とする。本研究により、深海で生きる生物の退化していない“眼”の役割、そしてその色彩認識の機能から、未解明な捕食など生態解明の一助となるであろう。 【“眼”を持たない深海生物の“視覚様感覚”の解析】 イソギンチャクは地球上で最も原始的な生き物の一つである。彼らは特別な受光器官、いわゆる眼のようなものは持っていないが、光を感知することができると報告されている。しかし、既報のケースは全て光の届く浅瀬の個体であり、深海イソギンチャク (Cribrinopsis SP.)の光に対する反応は未だに謎である。そこで、現在、青から赤に至る470-630 nmの範囲で、光に対して応答するかどうか、触手などの行動から解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当所の計画では、初期実験対象は深海魚のみであったが、深海無脊椎動物の光刺激に対する反応も同時解析できている。
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Strategy for Future Research Activity |
深海魚の色彩認識研究に関しては、平成24年度に個体に記憶させた色の中からどれを一番好むのか行動学的に解析を進める予定である。深海無脊椎動物に関しては、どの波長の光刺激に応答するのか引き続き解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費は、計画書通り、深海生物の視覚及び光刺激応答における行動を記録するデジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、ブルーレイレコーダーといった撮影機器の購入費用として使用する。また、消耗品費は人工海水に、旅費は学会参加費として使用する。
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