2014 Fiscal Year Annual Research Report
極限還元環境における化学認識機構の進化多様性に関する研究
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24657058
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
滋野 修一 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術研究員 (90360560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 淳 長浜バイオ大学, コンピュータバイオサイエンス学科, 准教授 (60465929)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱水噴出孔 / 極限環境 / 深海 / 神経系 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温高圧で有毒な硫化水素や重金属に富んだ極限環境である熱水噴出域の優占種に注目し、それらの感覚能力の解明を試みた。その概要は、1. 船舶および潜水艇を利用して熱水噴出孔に適応した動物種の採集を行い、特に高温耐性を保持する種を中心とした化学受容に関わるとされる細胞タイプを同定した。2. 熱水適応種を沿岸種と比較した際に特化した入力経路と思われる回路を同定し、さらに新規のグリア細胞から構成される多重の細胞体防御構造が発見された。また、3. アミン類、酸類、腐臭であるチオール類など合計35種の化学物質に対する応答実験では、活性酸素である過酸化水素について沿岸性の比較種よりも十倍の高感度で嫌悪性があることを示唆する結果を得た。一方、ビタミンE様の構造を持ち、抗酸化ストレス効果をもつリナロールに対する強い嗜好性が明らかになった。さらに、4. 今回が初めての試みとなる多様な熱水動物を対象とした網羅的な転写物すなわちRNA配列の解読により、各動物種80-200億塩基対の配列情報を得た結果、視覚、嗅覚、味覚、熱、痛み、環境ストレス応答などに関わる相同遺伝子の配列情報を得ることに成功した。その内、特に酸化還元、酸化ストレス、硫化水素、重金属、熱、痛み応答などの恒常性に重要なTRPチャネル遺伝子ファミリーのアミノ酸配列から特異構造を得た。最終的に刺激応答実験などの見解を踏まえると、これらの結果は熱水優占種の感知能力の特徴として、酸化ストレスや恒常性維持に関わる特化した外界感知能力および神経系経路における保護構造を進化させたものと考察された。
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