2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24657061
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂巻 祥孝 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (20315401)
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Keywords | チャノコカクモンハマキ / 鱗粉の脱落 / 利き翅 / 遺伝的基盤 / 左右非対称性 / 前後翅での利き翅の方向 |
Research Abstract |
昨年度の野生成虫の未展翅標本調査から、左前翅が上(利き翅が左)の個体が多かったチャノコカクモンハマキの飼育個体を材料に、利き翅の個体内変異、家族内変異、前翅と後翅の利き翅の関係、斑紋の左右非対称性を調査した。その結果、個体内変異では飛翔状態から着地し、静止状態に入る際に上になる前翅が右か左かは、通常決まっているが、同一個体でもまれに左右が入れ替わってしまうことがあることが分かった。一方、家族内変異を調べたところ雌親の利き翅にかかわらず、次世代の利き翅の左右の比率は1:1からずれてはいなかった。したがって、利き翅に遺伝的背景があるかは不明であり、かつ前年度にや成虫で確認された、本種の利き翅の左への偏りは、サンプリングエラーであろうと考えられた。前後翅の利き翅の関係は、調査個体の80%で左右が一致していたが、20%では、前翅と後翅の利き翅が左右逆であった。このように前後翅で利き翅が逆転している個体の多くが翅の閉じ方あるいは鱗片の脱落に「異常」があったことから、前後翅の利き翅は通常同じ側で互いにリンクしているが、急いで静止姿勢をとる必要がある場合や標本化するために毒瓶に詰められた場合などには、前翅の閉じ方が逆転することがあるものと思われた。翅の斑紋の左右非対称性については前翅の特定の斑紋の端を仮ランドマークとして前翅基部からそれぞれの仮ランドマークまでの距離の変異を調べたところ、ほぼすべての個体で右翅と左翅の間にわずかに変異(非対称性)があることが分かったが、この変異は前述の利き翅とは相関関係はなく、また、どの斑紋の仮ランドマークであるかによる非対称性の程度にも差はなく、いずれの斑紋変異も非対称性の揺らぎ(Fluctuating Asymmetry)の範囲を出ることなく、ゴキブリやカメムシの前翅のような方向性のある非対称性は検出できなかった。
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