2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24657066
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
西海 功 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (90290866)
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Keywords | 東アジア / 鳥類 / 起源 / 隠蔽種 / DNAバーコード / 系統地理学 |
Research Abstract |
申請者は南北に長い日本列島の存在が東アジアの鳥類の種多様性を生み出したという仮説を立てた。つまり、いくつかの鳥類で、日本列島での種分化とその後の大陸への分布拡大が起こったと考えている。この仮説をDNA による生物系統地理学的な分析によって検証することが本研究の目的である。 2013年度は、5月に韓国での野外調査をおこない、コゲラ、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、エナガなどの血液サンプルを10種20個体収集した。また、6月には大山と隠岐においても捕獲調査をおこない18種63個体の血液サンプルを収集した。Hebert et al. (2004) のPCR プライマーセット(BirdF1, BirdF2)を用いてターゲット領域を含む749bp のCOI 領域を増幅し、Applied Biosystems3500xLを用いて両側からシークエンスして解析した。既にDNA バーコードを登録済みの東アジア地域の集団の塩基配列と比較し、分子系統樹を作成した。その結果、24種の鳥類について隠蔽種と疑われる相互単系統集団が種内に存在することが判明し、分類学的な再検討の必要性が判明した。 生物系統地理学的解析としてヤマガラについてNCPA解析をおこなって学会発表をした。韓国の集団は奄美諸島と同じバーコード領域の配列を有しており、九州以北の日本列島の集団から派生したのではなく、奄美以南と共通する古い系統からの直接の派生が示唆された。しかし、NCPA解析には偽陽性が現れやすいとの問題点が近年指摘されるようになり、その認識が高まっているため、他の種でのNCPA解析は行わなかった。本研究の主題の仮説を検証するためのサンプリングとバーコード配列の取得はこの2年間で大きく進めることができたが、今後の課題として分析方法の検討が残された。
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