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2012 Fiscal Year Research-status Report

クエン酸回路と遺伝子発現系のクロストークによる炎症と発癌の制御機構

Research Project

Project/Area Number 24657092
Research Category

Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research

Research InstitutionHiroshima University

Principal Investigator

鎌田 英明  広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (10233925)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
KeywordsHIF1-α / NF-kB / ROS / クエン酸回路 / 炎症 / 発がん
Research Abstract

HIF-1αは細胞内の酸素濃度に応答して活性化される転写因子であり、解糖系やミトコンドリアのクエン酸回路を介してエネルギー代謝や活性酸素(ROS)の制御を行う。クエン酸回路で機能するコハク酸脱水素酵素(SDH)遺伝子やフマラーゼ(FH)遺伝子は癌抑制遺伝子であり、イソクエン酸脱水素酵素(IDH1)遺伝子は原癌遺伝子であるが、この発癌には2-オキソグルタル酸(2-OG)によるプロリン水酸化酵素(PHD)を介したHIF-1αのプロリン水酸化が関与すると考えられている。2-OGはクエン酸回路の主要な代謝産物であり、細胞内に取り込まれたクエン酸からイソクエン酸を介して生成することから、HIF-1αの活性がクエン酸回路との相互作用により規定される。今回、我々はクエン酸回路を介した炎症応答や発がんとの連関を解明するために、HIF-1αおよびNF-κBとクエン酸回路の相互作用についての解析を行った。細胞に対して低酸素刺激やPHD阻害を行うとHIF-1αのユビキチン化とプロテアソームによる分解が抑制されることによりHIF-1αの活性化が誘導される。ところが肝細胞を高濃度のクエン酸存在下で培養すると低酸素刺激やPHD阻害によるHIF-1αの活性化が顕著に阻害された。クエン酸存在下ではHIF-1αのプロリン水酸化を介在する2-OGの細胞内濃度は上昇することから、HIF-1αのユビキチン化とプロテアソームによる分解の亢進がこの抑制に関与する可能性が考えられた。しかしプロテアソームやPHDが阻害された状況下においてもHIF-1αの活性化の抑制が観察されたことから、この制御には未解明の新規制御機構が関与することが判明した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

クエン酸回路代謝物はさまざまなタンパク質の修飾を介して転写因子の活性を制御するが、この代謝経路を介した遺伝子発現や活性酸素産生の制御が炎症や発がんで重要な役割を担うことが想定されてきた。本研究の目的は炎症と発がんで中心的な役割を果たすHIF-1αなどの転写因子とクエン酸回路の相互作用の解析を通じて、炎症と発がんに連関した新たな分子機構を解明することである。本研究で我々はHIF-1αがクエン酸回路の代謝産物によりこれまでに知られていない全く新たな機構の活性制御を受容していることを見いだした。クエン酸回路により活性制御を受容する転写因子としてNF-κBやNrf2が知られているが、いずれもユビキチン化やプロテアソーム系での分解などの既知の分子機構を介するものであることから、今回の我々の発見はこれまでにないユニークな細胞制御機構の発見の端緒であると考えている。本発見は萌芽研究にふさわしいあらたな研究分野の開拓につながるものであり、この分子機構の解明により該当研究分野の研究を大きく発展させることができると期待している。また酸化ストレスの発生はミトコンドリアと密接に連関するが、この過程にはクエン酸回路を介したROSの制御が関与すると考えられる。本発見をもとに生体内でのROS産生の新たな制御機構の解明につなげたい。

Strategy for Future Research Activity

前年度に見いだしたクエン酸回路によるHIF-1αの活性制御の分子機構を解明する。これまでの解析により既知のPHDによるプロリンの水酸化を介したユビキチン化や、プロテアソームによる分解制御とは独立した新たな制御機構が機能していることが判明しているので、この機構の解明を目的として解析を遂行する。とくに可能性が高いのが細胞種特異的に機能する翻訳制御機構である。興味深いことにプロテアソームを阻害した条件化でHIF-1αを外来性に細胞内に導入して発現させた場合でもHIF-1αはクエン酸により発現が抑制され、さらにこのときのHIF-1α遺伝子の転写レベルは抑制されないことが判明している。invitroにおける転写・翻訳系と、細胞抽出液を用いたHIF-1α発現制御の再構成系を確立して、クエン回路代謝産物によるHIF-1α特異的な翻訳制御の分子機構を解明する。さらにマウスを用いた解析によりこの制御が炎症と発がんにどのような効果をもたらすのかを解明する。さらにこの機構がROSの産生と酸化ストレスの発生にどのような効果をもたらすのかを明らかにする。またNF-κBはHIF-1αと密接なクロストークを行うことから、HIF-1α特異的制御がNF-κBを介してどのような効果をもたらすのかを解明する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

分子生物学的・生化学的解析によりクエン酸回路代謝産物を介したHIF-1αの発現制御の解析を行う。とくにinvitroにおける転写・翻訳系の再構成計画立のための試薬・機器のために研究費の一部を充当したい。
また、invitroでの研究成果をもとにマウスを用いた解析を行う。とくにHIF-1αおよびNF-κBに連関した遺伝子改変マウスの作製と、こもマウスを使用した炎症発がんモデル実験を行うが、研究費の一部を遺伝子改変マウスの開発と、マウスの飼育、マウスモデル実験のために費用として充当したい。

  • Research Products

    (8 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (4 results) (of which Peer Reviewed: 4 results) Presentation (4 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Integrator complex plays anessential role inadipose differentiation2013

    • Author(s)
      Y. Otani, Y. Nakatsu, H. Sakoda, T. Fukushima, M. Fujishiro, A. Kushiyama, H. Okubo, Y. Tsuchiya, H. Ohno, S. Takahashi, F. Nishimura, H. Kamata, H. Katagiri, T. Asano
    • Journal Title

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      Volume: 434 Pages: 197-202

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Role of Pin1 in the pathogenesis of non-alcoholic steatohepatitis in a rodent mode2012

    • Author(s)
      Y. Nakatsu, Y. Otani, H. Sakoda, J. H. Kamata, A. T. Asano, et.al.
    • Journal Title

      J. Biol. Chem.

      Volume: 287 Pages: 44526-44535

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Angiotensin receptor 1 blocker valsartan normalizes gene expression profiles of 3T3-L1 adipocytes altered by co-culture with LPS-treated RAW264.7 macrophages2012

    • Author(s)
      S. Kumamoto, A. Kushiyama, Y. Nakatsu, H. Sakoda, M. Fujishiro, M. Iwashita, H. Ohno, J. Zhang, Y. Guo, H. Aburatani, H. Kamata, F. Nishimura, and T. Asano
    • Journal Title

      Obes. Res. Clin. Pract.

      Volume: 6 Pages: 288-297

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Valsartan, independently of AT1 receptor or PPARγ, suppresses LPS-induced macrophage activation and improves insulin resistance in cocultured adipocytes.2012

    • Author(s)
      M. Iwashita, H. Sakoda, A. Kushiyama, M. Fujishiro, H. Kamata, T. Asano, et.al.
    • Journal Title

      Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab.

      Volume: 302 Pages: 286-296

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] TNFに連関したシグナル系のレドックス制御と細胞死

    • Author(s)
      鎌田英明
    • Organizer
      第85回日本生化学会合同大会シンポジウム
    • Place of Presentation
      福岡
    • Invited
  • [Presentation] IKKβの脱リン酸化反応における転写因子RelAの関与

    • Author(s)
      土谷佳弘, 金本麻裕, 菅野雅元, 浅野知一郎, 鎌田英明
    • Organizer
      第85回日本生化学会合同大会ワークショップ
    • Place of Presentation
      福岡
  • [Presentation] 腫瘍壊死因子(TNFα)に応答した細胞死とRIP1とRIP3の発現変化

    • Author(s)
      金本麻裕, 土谷佳弘, 浅野知一郎, 鎌田英明
    • Organizer
      第85回日本生化学会合同大会
    • Place of Presentation
      福岡
  • [Presentation] Stress-induced NF-kB activation mediated by the nuclear IKK and cell death

    • Author(s)
      土谷佳弘, 金本麻裕, 菅野雅元, 浅野知一郎, 鎌田英明
    • Organizer
      第35回日本分子生物学会
    • Place of Presentation
      福岡

URL: 

Published: 2014-07-24  

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