2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24657093
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40415287)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛋白質 |
Research Abstract |
銅イオンは様々な酵素活性や電子伝達の中心として機能する必須微量金属であるが、毒性の高い活性酸素の発生源ともなりうることから、細胞内での銅イオン輸送は厳密に制御される必要がある。銅イオンは細胞膜に存在するトランスポーター(CTR1)によって細胞内へと運び込まれ、銅運搬タンパク質である銅シャペロンに渡されると考えられている。しかし、CTR1から銅シャペロンへと銅イオンが直接渡されることを示す実験的な証拠は未だに示されていない。そこで、CTR1および銅シャペロンを精製し、それら二つのタンパク質だけを用いることで銅イオンの移動を再現できるのか検討し、細胞内での銅イオン輸送について構成論的なアプローチによりその制御メカニズムの解明を試みた。 そこで本研究では、銅シャペロンのモデルとして出芽酵母由来のCCSタンパク質に着目した。CCSはSOD1に銅イオンを輸送するタンパク質である。また、膜タンパク質であるCTR1は、C末端側に存在するドメイン(CTR1C)が細胞質側となるように膜上に配置されていることから、CTR1Cドメインが銅シャペロンとの相互作用を行う部位であると考え、CTR1Cを作製・精製した。精製したCTR1CにCu+イオンを滴下することで銅結合型CTR1C(Cu-CTR1C)を作製し、アポ型のCCS(apo-CCS)と混合した。その後、CCSとCTR1Cをサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、CCSを含む分画について、タンパク質及び銅イオンの比色定量を行った結果、CCSは銅イオンを結合していることが分かった。つまり、CTR1Cに結合したCu+イオンがCCSに移動したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるタンパク質間銅イオン輸送システムの試験管内再構築にあたり、CTR1C及びCCSタンパク質の作製・精製に成功し、両タンパク質を試験管内で混合するだけで銅イオンがCTR1CからCCSへと移動することが分かった。よって、本研究は概ね順調に遂行されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
銅結合型CTR1Cとアポ型CCSを混合するだけで銅イオンがCCSに移動することが明らかとなったものの、両タンパク質間での銅イオン移動は、CTR1CとCCSが複合体を形成することで進行するのか明らかでない。そこで、両タンパク質間での相互作用やリポソームを用いた再構成系の構築についてより詳細に検討を行う予定で、細胞質に存在する還元型グルタチオンなどのCu+イオンのキレーターの役割等についても解明を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SOD1/CCS/CTR1タンパク質を、大腸菌を用いて作製し、各種のカラムクロマトグラフィーにより精製する予定である。よって、連携研究者・研究協力者を含め計5名がタンパク質作製・精製を行うために必要となる研究経費を、大腸菌培養関連試薬、及びタンパク質精製関連試薬として消耗品費に計上している。また、GFPとの融合タンパク質作製の際に行う遺伝子クローニングのための経費、リポソームを作製する際に使用するリン脂質の購入経費、及び油中水滴を利用したリポソーム作製に必要となるチャンバーの作製費用についても、消耗品費として計上している。 また、本課題を通じて得られた成果を広く知らしめるために、国内外で開催されるできる限り多くの学会に積極的に参加し発表することを考えている。そのために、研究代表者・研究協力者ともに成果発表旅費が必要となる。
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Research Products
(7 results)