2012 Fiscal Year Research-status Report
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24657097
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
佐伯 泰 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (80462779)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プロテアソーム / 可逆性顆粒 / ミトコンドリア / ATP |
Research Abstract |
プロテアソームはATP依存性の巨大タンパク質分解酵素であり、ユビキチン化されたタンパク質を分解することで様々な生命現象を制御している。プロテアソームの構造や分子集合機構に関する研究は大きく進展したが、細胞内動態に関する研究は世界的にも大きく立ち遅れている。プロテアソームの顆粒形成は、プロテアソーム貯蔵顆粒 (Laporte et al, JCB, 2008)が過去に報告されており、定常期の細胞においてプロテアソームが細胞質に可逆性の顆粒を形成することがわかっている。しかし、これらの顆粒の形成機構、構成因子、生理学的意義は不明であるため以下の解析を行った。 1.出芽酵母の変異体ライブラリー約6000株を作製しプロテアソーム局在に異常を示す変異体のスクリーニングを行った。その結果、ミトコンドリア呼吸欠損変異株においてプロテアソームが細胞質に顆粒構造を形成することを見出した。 2.既知の顆粒やオルガネラ、ユビキチン関連因子との共局在を解析したところ、Sec13がいずれのプロテアソーム顆粒にも含まれていた。 3.出芽酵母の定常期には若い娘細胞由来のQ細胞と古い母細胞由来のNQ細胞が混在しているが、プロテアソーム顆粒はNQ細胞において定常期の早い時期から観察された。NQ細胞ではミトコンドリア活性が低下しており、実際、ミトコンドリアの膜電位が低い細胞においてプロテアソーム顆粒が観察された。ミトコンドリア機能の低下は酸化ストレスの蓄積、ATPレベルの低下、脂質代謝異常などを引きこすが、各種変異体や薬剤を用いて検討したところ、ATPレベルの低下がプロテアソーム顆粒形成を促進することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画通り進展している。 約6000株の酵母変異株を用いたスクリーニングにより、ミトコンドリアの機能欠損がプロテアソーム顆粒の形成を誘導することを見出した。出芽酵母は極性をもった非均等分裂により増殖するため、細胞老化研究のモデル生物としても有用であるが、今回解析を行ったところ、細胞老化によるミトコンドリア機能の低下がプロテアソーム顆粒形成と相関するという結果が得られた。細胞内局在マーカー等を用いた解析より輸送小胞のCOPIIの構成成分Sec13がプロテアソーム顆粒に存在するなど興味深い知見も得られている。 また、ヒト培養細胞においてもプロテアソームGFPノックイン細胞を作出し観察した結果、プロテアソームの顆粒状構造物が確認されている。よって、プロテアソームの顆粒形成は進化的にも保存された現象と考えられる。 このように研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアの機能低下が細胞内ATPレベルの低下を引き起こし、その結果、プロテアソームの顆粒形成が誘導されることがわかったが、プロテアソーム自体の構造変化や機能にどのような影響を及ぼすのかは不明である。 そこで、今後はプロテアソーム顆粒が試験管内で再構築可能か検討する。GFP融合プロテアソームを精製し、ATP濃度などバッファーの組成を変化させることで顆粒形成が起こるか蛍光顕微鏡により観察する。 一方、プロテアソーム顆粒の生物学的意義を解析するため、再び酵母変異株ライブラリーを用いプロテアソーム顆粒形成に欠損を示す株をスクリーニングする。顆粒形成不能体の表現系を解析することで顆粒形成の詳細なメカニズムと意義を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費:プロテアソーム顆粒の試験管内再構築に向けて、プロテアソームを大量に調製する必要がある。そのため、抗体レジン、透析チューブなどが必要である。また、プロテアソーム顆粒の構成成分を定量プロテオミクスにより確実に同定するため、安定同位体標識アミノ酸と専用の培地が必要である。これらに加え、DNA合成費等を消耗品費として計上した。 旅費:国内学会2件、国際学会1件に参加する予定で計上した。 英文校正費:本研究で得られた成果を、高いimpact factorの国際誌に投稿するため計上した。
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