2012 Fiscal Year Research-status Report
NMRを用いたべん毛モータータンパク質の構造動態の挑戦的解析
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24657099
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本間 道夫 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50209342)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | べん毛 / NMR / タンパク質の構造 |
Research Abstract |
プロトン駆動型べん毛モーターと比較して、ナトリウム駆動型べん毛モーターにおいても、回転力産生に重要な残基はFliGのC末端領域にあると考えられているが、保存荷電残基だけではクリティカルな結果が得られなかった事から、ダイレクトに相互作用に関与している重要残基の特定は遅れている。そこで本研究では、これまで直接示されていなかった回転子-固定子間の相互作用の検出だけでなく、そのときに重要な相互作用残基を特定するために、溶液NMRを用いた回転子-固定子のタイトレーション実験を行い、相互作用の観察と相互作用残基の特定を試みた。相互作用に重要であると言われるFliGのC末端領域(FliGc)を含むようなリコンビナントタンパク質を作成し、NMR測定の基本情報である1H-15N TROSY-HSQCを測定し、測定条件の検討を行なった。その後、得られた最適条件において1H-13C-15Nの3D測定によってHSQCシグナルのアミノ酸帰属を試みた。また、相互作用検出のタイトレーション実験で用いる、固定子を構成する膜タンパク質であるPomAを大量発現し、デタージェントによる可溶化・精製を試みた。その後、各々精製したFliGcとPomAを混合し、相互作用の検出を試みた。作成したFliGc断片は、50mM PhosphateNa buffer, pH6.5条件において十分に分離されたシグナルを得る事が出来た。その後に行なった3D測定は、シグナルの重複によって帰属困難な物がみられたが、大まかには良い状態であった。これにより、現在までで約40%前後のシグナルの連鎖と、そのうちの半分程のアミノ酸の特定まで行う事が出来た。膜タンパク質であるpomAは、これまでにあまり精製例がなかったが、今回の精製によって、PomAは単独で固定子の様な4量体を形成する可能性が示唆される結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FliGのC末端領域(FliGc)のNMRのシグナルの完全帰属を本年度中に行う予定であったが、分離が十分でないため出来なかった。しかしながら、PomAの細胞質領域に可溶性タグをつけて解析した結果を、論文にまとめることが出来た。計画はやや遅れているが、着実に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
FliGのC末端領域(FliGc)について、良好なシグナルを得るために、Hisタグを切断したものや、変異体のHSQCシグナルを測定することで、すべての残基の帰属を行いたい。タイトレーション実験は、PomAの可溶化に用いたデタージェントがFliGcの構造に影響を与える可能性が示唆される結果が得られたため、更なる精査が必要である。今後は帰属の完成、PomAとの相互作用条件の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)前年度研究の継続:前年度の研究の進行状況を考慮し、計画を見直し遂行する。2)NMRによるPomA-FliG間の相互作用の検討:固定子タンパク質PomAと回転子タンパク質FliGとの間で回転力が作られていると考えられているものの、未だそれを直接的に示す実験事実は発表されていない。FliGのピークの帰属に完全ではないが成功しているので、PomAの細胞質領域を加える事で、タイトレーション実験を行う。PomAとの相互作用が失われてしまうことが予想されるFliGのC末端ドメインの変異が同定されている。この変異を導入したFliGのC末端ドメインを安定同位体標識して、PomAを加えたタイトレーション実験行う。逆に、FliGとの相互作用が失われると予想されるPomAの細胞質ドメインの変異が同定されている。これら変異体を用いて、同様なタイトレーション実験を行い、相互作用部位の残基の確認を行う。 3)生化学手法によるPomA-FliG間の相互作用の検討: NMRによる結果をふまえ、PomAの精製過程において界面活性剤の種類を検討するなど、出来るだけ相互作用を損なわないような条件下での共沈実験をおこなう。また、PomAとFliGの推定相互作用面のアミノ酸残基をシステイン残基に置換した変異株を作製し、これらの変異タンパク質を組み合わせ、両者のシステイン残基部分のジスルフィド架橋(S-S結合)の検出からPomAとFliGの相互作用証明を目指す。可能であればSH基に特異的な蛍光物質を結合させることにより、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)実験を行う。
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