2012 Fiscal Year Research-status Report
多チャンネル・セルを用いたハイスループットX線小角散乱
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24657100
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
秋山 修志 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 教授 (50391842)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線小角散乱 / 多チャンネル / セル |
Research Abstract |
X線小角散乱はタンパク質分子の大きさや形状を溶液中で評価する手法であり,近年,X線結晶構造解析との相補的利用が主流となりつつある.実験の操作自体は複雑でないが,単調な繰り返し作業が長時間続くこと,質を落とすことなくデータ収集効率を上げるのが容易でないという問題点がある.本申請課題では,多チャンセル型セルを世界に先駆けて開発し,12種類に及ぶタンパク質試料の濃度依存測定を従来の数十倍の効率で処理させる.各測定チャンネルの同一性を高めることにより,実験データの品質を大きく損なうことなく,実験にかかる人的・時間的なコストを大幅に削減することを目的としている. 本年度は小型のプロトタイプ機(8×3=24ポート)を設計し,予定している装置デザインで要求精度が満たされるかどうかを検討した.プロトタイプ機に標準試料を満たし,それぞれの観測ポートからの散乱強度を評価したところ,ポート間のムラが予想よりも随分大きく,装置設計の基本部分を再検討することとなった. 計画段階で予想されていたように,2枚目の窓材のシール方法がかなり重要であることが示唆された.窓材の圧着方法を試行錯誤して検討し,局所的突っ張りや歪みを抑える方法の開発に取り組んだ.これにより一定の改善が見られたが,目標としているムラ1%以下にはまだ届かない状況であった.これらの結果は,窓材の支持部分に潜在的な不均一性が存在することを示しており,現在,その改善に向けてデザインや素材を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロトタイプ機を作成してその性能評価を行ったところ,ポート間のムラが計画時の予測よりも随分大きく,セルの基本デザインを再検討する必要が生じたため.
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Strategy for Future Research Activity |
プロトタイプ機のデザイン改良を通して,ポート間のムラを1%以下に抑える大面積シール方法の開発に取り組む.その後,これらの活動を通して得た知識をもとに実機の作製に取り掛かる.大きさは96well型のマイクロプレートを基本とし,試料温度を保てるように周囲を断熱性のベークライト等で取り囲む.それぞれの観測ポートを1枚の合成石英窓剤Aでシールしておき,サンプルを各ポートに分注後,反対側をもう一枚の合成石英窓剤Bで完全にシールする.窓剤の費用は,その面積単位というより,むしろ希望の指定された大きさへ切り出す工程で生じている.よって現段階では,一度使用した窓剤は破棄して新しいものに張り替える方針である.2枚目のシール方法が知恵の絞りどころとなる.観測ポートの同一性を担保するためには,窓剤の局所的突っ張りや歪みを抑える工夫が必要となる.これは観測ポートの数が増えるにつれて困難さを増すため,シール材の種類や圧着方法を試行錯誤して検討する必要があると予測される.作製した実機に超純水を満たし,水の散乱曲線を観測ポート間で比較する.ここで1%以上の歪みが検出されれば,窓剤の張り直し等を試みる.それでも突っ張りや歪みが改善されない場合は,セル本体のデザインについて再検討する.観測ポート間のムラが1%に抑えられれば,次に標準BSA試料を多チャンネルセルへ導入する.観測ポートの同一性を,再度,タンパク質の散乱強度でもって検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
両面研磨の石英について、歪みの少ない材質を検討して購入を進める。また、石英窓の支持部についても平滑性の高い加工、化学耐性の高い素材などについて検討し、購入を進める。
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