2013 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンを用いた革新的超高分解能低温電子顕微鏡法の開発
Project/Area Number |
24657104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
難波 啓一 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (30346142)
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Keywords | 低温電子顕微鏡法 / グラフェン / 蛋白質 / 生体分子 / 構造生物学 |
Research Abstract |
クライオ電子顕微鏡法は機能状態の生体分子の立体構造解析法として近年急速に発展したが、それには電子顕微鏡の高性能化とともに画像解析の高精度化、計算機の高速化や画像検出器の高速化・高解像度化など、様々な面での技術改良や進歩が重要な役割を果たしている。わずか一滴(数マイクロリットル)の微量な水溶液試料で解析を完了できるため、生命科学の様々な分野で必須の技術となりつつあるが、急速凍結試料グリッドを作成する過程には多くの課題があり、高分解能構造解析技術の汎用化を困難にしている。 試料グリッドの作成には微量の試料水溶液を多孔カーボン薄膜搭載グリッドに載せ、大半を吸い取ることで薄膜孔内に水溶液薄膜を張り、グリッド全体を液体エタンに突入させて急速凍結するが、氷薄膜の厚さ制御の難しさが課題で、厚すぎると像コントラスが悪く、逆に薄すぎると生体分子の立体構造を歪めるので、高分解能の達成は容易でない。また可溶化した膜タンパク質複合体など疎水性の試料はカーボン薄膜に吸着し、氷薄膜中に分散させるのが困難である。 本研究では、試料グリッドの多孔カーボン薄膜上に単原子層のグラフェンシートを載せ、その表面に生体分子を吸着させることで、氷薄膜の厚さ制御と同時に膜タンパク質複合体の効率的な画像データ収集を可能にする技術の確立を目指した。ただ、メーカーに作成委託したグラフェンシート搭載グリッドは理想的なものからほど遠く、小さなフレークが重なり合い使い勝手の大変悪いものであった。よって大面積単層グラフェンシートの本格的な作成技術の習得から取り組む必要がある。代わりに独自の極薄カーボン膜をグリッド上に搭載して膜タンパク質複合体の画像データ収集を実施した。赤痢菌のニードル複合体では、これまでに他研究グループが発表した構造と明確に異なる特徴を確認し、立体構造解析を進行中である。
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