2013 Fiscal Year Research-status Report
電子線結晶構造解析によるクーロンポテンシャルの可視化
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24657111
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
米倉 功治 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 准主任研究員 (50346144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞木 さおり 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 研究員 (20513386)
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Keywords | 構造生物学 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
生体マシンの作動原理の解明、創薬への応用を目指し、生体分子が機能を発現する上で本質的に重要な因子となるクーロンポテンシャルの可視化を行っている。X線は原子の電子雲に散乱されるのに対して、電子は原子のクーロンポテンシャルに散乱される。クーロン力は長距離に渡って作用するため、いろいろな生命活動に大きな影響を及ぼす。例えば、プロトン輸送やイオンの配位、蛋白質の安定性、化学反応にも深く関与している。本研究では、蛋白質のごく薄い三次元結晶の電子線回折から、そのクーロンポテンシャルマップを得る新技術の開発を目指している。クーロンポテンシャルは、X線結晶構造解析では得ることのできない情報であり、これまでに実験的に測定する汎用的な手法は存在しない。 25年度は、筋小胞体Ca2+-ATPase、牛肝臓カタラーゼのごく薄い三次元結晶から集めた電子線回折パターンより得た、それぞれ3.4 Åと3.2 Å分解能のクーロンポテンシャルマップを詳細に解析し、アミノ酸側鎖、金属イオンの荷電状態の可視化に成功した(論文準備中)。また、位相情報の取得のため重原子置換体から電子線回折を集めた。以上により、非常に薄い結晶から新規構造の解析を可能とする新しい技術として確立することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子顕微鏡では試料ホルダーの構造及び試料形態の制限から、試料を約±60°までしか傾斜できない。特に、薄い結晶のように支持膜に同一の面で吸着する試料では、データを収集できない円錐状の領域(ミッシングコーン)が残ってしまう。この結果、得られる密度マップの分解能は膜に垂直な方向に悪くなる。この問題に対して、非結晶学的対称単位の平均や密度改変法(density modification)を適用することで、密度マップを改善できることがわかった。さらに、電子線の散乱因子の与え方を工夫することで、筋小胞体のCa2+-ATPase、カタラーゼのアミノ酸側鎖の荷電状態、金属イオンの酸化状態の同定に成功している(論文準備中)。また、位相情報の取得のため重原子置換体からの電子線回折の測定を行った。以上から当初計画通りに順調に研究が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
重原子置換体の解析を進め、位相情報の取得が可能性を確認する。さらに、より高傾斜のデータ測定が可能になるよう新型試料ホルダーの開発、試料サポート検討を進めていく。新規試料結晶からの回折データの取得も並行し、非常に薄い結晶から構造解析可を行う汎用性の高い技術としても確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、構造解析プログラムの開発とデバグ、開発したプログラムを用いた解析を行う必要が生じた。26年度に試料の結晶化及び試料サポートの検討を行い、重原子置換体や新規試料の結晶からの回折データの取得を本格的に進めるのが適当と判断したため。 重原子置換体や新規試料の結晶からの回折データを測定するため、東京大学分子細胞生物学研究所への出張旅費に使用する。また、試料サポートの検討や、電子顕微鏡試料のサポートに用いる穴の開いたカーボン膜グリッド、結晶化に用いる試薬等を購入する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] X線自由電子レーザーを用いた非結晶粒子のコヒーレントX 線回折イメージング2014
Author(s)
中迫雅由, 苙口友隆, 関口優希, 小林周, 橋本早紀, 白濱圭也, 山本雅貴, 高山裕貴, 米倉功治, 眞木さおり, 引間孝明, 高橋幸生, 鈴木明大, 松永幸大, 乾弥生, 登野健介, 亀島敬, 城地保昌, 犬伏雄一, 星貴彦
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Journal Title
日本結晶学会誌
Volume: 56
Pages: 27-35
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[Journal Article] Post-transcriptional regulator Hfq binds catalase HPII: crystal structure of the complex2013
Author(s)
Yonekura, K., Watanabe, M., Kageyama, Y., Hirata, K., Yamamoto, M. and Maki-Yonekura, S.
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Journal Title
PLOS ONE (2013)
Volume: 8
Pages: e78216 (7)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structure and activity of the RNA-targeting Type III-B CRISPR-Cas complex of Thermus thermophilus2013
Author(s)
Staals, R. H. J., Agari, Y., Maki-Yonekura, S., Zhu, Y., Taylor, D. W., van Duijn, E., Barendregt, A., Vlot, M., Koehorst, J. J., Sakamoto, K., Masuda, A., Dohmae, N., Schaap, P. J., Doudna, J. A., Heck, A. J. R., Yonekura, K., van der Oost, J. and Shinkai, A.
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 52
Pages: 135-145
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] KOTOBUKI-1 apparatus for cryogenic coherent X-ray diffraction imaging2013
Author(s)
Nakasako, M., Takayama, Y., Oroguchi, T., Sekiguchi, Y., Kobayashi, A., Shirahama, K., Yamamoto, M., Hikima, T., Yonekura, K., Maki-Yonekura, S., Kohmura, Y., Inubushi, Y., Takahashi, Y., Suzuki, A., Matsunaga, S., Inui, Y., Tono, K., Kameshima, T., Joti, Y. and Hosh, T.
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Journal Title
Rev. Sci. Instrum.
Volume: 84
Pages: 093705 (11)
DOI
Peer Reviewed
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