2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24657122
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
飯田 哲史 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教 (60391851)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | RNA / 老化 |
Research Abstract |
非対称な細胞分裂(出芽)で増殖する出芽酵母では、母細胞の老化進行と娘細胞の若返りが同時に起こることから、ゲノムの不安定化などを引き起こす未知の老化因子が母細胞へ非対称に分配や蓄積することによって、母細胞の老化が進行すると考えられる。当年度の研究から、エルトリエーターで娘細胞から老化が進行した母細胞を段階的に分画しゲノムDNAを精製したところ、ゲノムDNAのほかに低分子の核酸が老化した細胞に蓄積していることが解った。これらは、一本鎖特異的なヌクレアーゼで消失せず、熱処理後一本鎖を分解するリボヌクレアーゼで処理することにより消失することから、二本鎖RNAであると考えられる。老化細胞に蓄積する核酸分子が老化に関与する可能性に着目し、この二本鎖RNA(madRNA: mother accumulated doublestrand RNA)がの精製法の確立と配列決定を目的として研究を進めた。 “madRNA の精製法の確立”:madRNA は、ゲノムDNA の精製法によって夾雑物として高い精製度で精製されてくることを見出している。ゲノムDNA 精製法では、高濃度のRNaseA で処理する過程により、madRNA とほぼ同じ長さの範囲(100b 程度)で大量に存在するtRNA 群をほとんど除去できた。しかしRNaseA 処理をしたmadRNA をアガロース電気泳動によって長さで分離後、市販の核酸ゲル抽出キットで精製を試みたが、RNA分解が激しくその後の解析に使える品質を維持出来ないことがわかった。そこで、アクリルアミド電気泳動後ゲルを抽出する方法に変え、二本鎖RNAを比較的安定に精製できるようになった。また、madRNAと同様に長さが短いRNAを介した分裂酵母RNA干渉機構の研究を参考にしてRNAの精製法を検討し、小分子RNAが細胞周期の制御に関与していることも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、madRNA の同定に主眼をおいて、madRNA の機能とその制御機構の解明を目指している。当年度においてmadRNAの簡便で大量精製に必要な市販の核酸精製キットが使用が出来ず、madRNAの精製法の確立に時間がかかってしまったためにmadRNAの同定のための条件検討が十分に出来なかったことが遅れている第一の理由だと考えられる。また、第二の理由として、madRNAの同定に必要なシークエンスライブラリーの作製が上手く行かず、配列決定まで行き着いていないため、研究計画に遅れが生じていることがあげられる。シークエンスライブラリーの作製の問題として、精製できるRNAの量が少なく短いこと、ランダムプライマーを用いた汎用されている方法では効率が悪いことが考えられる。また、madRNAの長さが一定でないため、アダプター付加によるライブラリー作製法が困難なのも今後対策が必要であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(I) 「madRNA の網羅的な同定」:当年度で達成できなかった、madRNAの配列同定を最優先目標として今後研究を進める。具体的には、madRNAを大量に精製できるような系を確立するなどライブラリー作製時に必要なRNA量を確保することを目指す。また、ライブラリー作製の際アダプター付加を用いた方法ではmadRNAのサイズがある程度揃っていることが品質の高いライブラリー作製を行う場合の精製過程における重要な点であることに着目して、AMpureなどのSPRIビーズを用いて、madRNAの二段階サイズ選択を行いライブラリー作製に適したmadRNAのサイズを決定するなど、ライブラリー作製の最適化を行う。また、madRNAの配列が得られた際には、大量配列の情報処理が必要となるが、madRNAの配列情報処理には、当研究所の情報処理を専門とする研究室から助言を得て解析をすすめ、発現量が多いmadRNAを抽出したのち、madRNAの機能解析へと研究を進める予定である。 (II)「madRNA の遺伝学的解析」:“madRNA 遺伝子破壊株の解析”として発現量の多いmadRNAからそれらを発現する遺伝子の破壊を行い、madRNAの発現量が少なくなるものを選抜し、その遺伝子破壊株を用いて老化解析を行う。また、老化に伴い増加する染色体不安定化に注目し、遺伝子破壊株におけるDNA 損傷修復の異常やDNA 組換への影響についても解析を行う。 “madRNA 遺伝子大量発現による解析”として、madRNA 遺伝子断片を二つの強力なプロモーターに挟まれた領域に挿入したvector を作製し、酵母内でのmadRNA の強制発現を行う。このとき、madRNA の強制発現による染色体不安定化への影響などを調べる。 (III) madRNAの細胞内動態、(IV)madRNA複合体の同定についても進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(2 results)