2013 Fiscal Year Annual Research Report
分裂期染色体の表層領域が染色体安定性に寄与する機構
Project/Area Number |
24657124
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高木 昌俊 独立行政法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (60324779)
|
Keywords | 分裂期染色体 |
Research Abstract |
分裂期染色体の表層領域(perichromosomal fieldを略してPCFと呼ぶ)は、具体的な機能が未知の細胞内領域である。本研究ではPCFの主成分であるKi67抗原の機能解析を手がかりに、PCFが分裂期過程の「品質」(染色体分離の精度)に関与することを示し、さらにPCFの作用機序を理解することを目的とした。具体的には、Ki67抗原の除去により引き起こされる分裂期過程の多様な異常(染色体の整列異常や凝縮異常、紡錘体の機能異常、染色体不安定性など)を詳細に観察し、その背後にある分子メカニズムを理解することを目指した。 Ki67抗原と脱リン酸化酵素PP1γの相互作用について詳細を解析し、PP1γと相互作用しない変異型Ki67抗原を作出した。これを有効に利用して、PP1γの分裂期染色体上への集積の一部がKi67抗原との相互作用に依存していることを示した。またPP1γ以外の多くの因子についても、Ki67抗原に依存して分裂期染色体上へ集積することを示した。PCFが特定因子を特定のタイミングで濃縮する「反応場」として機能する可能性を強く支持した。 PCFが分裂期染色体構造を外側から支持しているという斬新な可能性を検証した。PCFの主成分であるKi67抗原を除去しても、あるいは分裂期染色体のコアに主に局在するコンデンシン複合体を除去しても、分裂期染色体構造は一見保たれてた。これに対し、Ki67抗原とコンデンシン複合体の双方を同時除去すると、分裂期染色体構造が著しく損なわれた。両者が分裂期染色体構築においてリダンダントに機能している可能性を提示した。一方でKi67抗原が染色体構造を制御する機構については、具体的な知見が殆ど得られなかった。生化学的解析の必要性が強く示唆された。
|