2012 Fiscal Year Research-status Report
力刺激が心臓のエネルギー代謝基盤を支えるメカニズム
Project/Area Number |
24657127
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椋 利彦 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋 / 力刺激 / エネルギー / 酸化的リン酸化 |
Research Abstract |
心臓は変動する脈拍、血圧に対応しながら循環の恒常性を維持している。このためには、心拍を維持するために十分なATPが産生され続けなければならない。心拍に使われるATP量はきわめて多く、ATP産生基盤のエネルギー代謝が破綻すれば、心不全、死を意味する。従って、心臓は循環動態に呼応してエネルギー代謝を制御しなければならない。しかし、このメカニズムは全く解明されていない。心筋に対する力学負荷に反応してエネルギー代謝を制御する因子を発見したので、本研究ではその分子メカニズムを解明する。 24年度には、力刺激によって細胞質から核内に移行する MKL2 が、実際、圧負荷をかけたマウス心筋組織で核内シャトルを速やかに起こすことを確認した。また、ERR (Estrogen-related receptor)/PPAR (Peroxisome proliferator-activator receptor)を活性化することも確認した。心筋細胞を用いる代わりに、骨格筋に分化するC2C12細胞を用いた実験では、実際に酸化的リン酸化の増加が見られた。この時、解糖系の更新は抑制されたままであった。また、C2C12細胞は、通常、Type IIb 筋肉に分化するが、力刺激を加えた場合、Type IIaのみに分化することも見いだされた。種々の代謝系酵素の遺伝子発現もこの結果を裏付けるものであった。 以上の結果から、MKL2 が代謝調節因子であることが確認できた。現在、MKL2 KO マウスの解析を始めており、in vivo 機能の初期解析を開始し、次年度につながる研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、当初の目標をほぼ達成できたと考えている。力刺激によるMKL2の核内シャトルは、マウス心臓とC2C12細胞を用いた in vivo、in vitro の両系で確認できた。また、ERR/PGC1 との協調的な転写活性化も確認することができた。C2C12細胞を用いた実験は、in vitro系であるため、実験が容易で、type IIa 筋肉への選択的分化誘導やさまざまな代謝系酵素遺伝子の発現パターン解析もこれを指示する。このような知見は、本研究を進める上で、極めて重要な知見であり、初年度の到達点としても重要な意味を持っている。 加えて、力刺激を加えたときに、解糖系の更新がなぜ抑制されたままなのか、重要な新知見と勧化て要るが、その分子メカニズムを解明する必要が出てきた。これは、次年度への継続課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度には、MKL2 ノックアウトマウスがほぼ自由に使えるようになる。力刺激後の代謝シフトの問題は、心筋、骨格筋の両者で、このマウスを用いた解析を進める必要がある。ただ、マウス心臓に圧負荷をかける実験(TAC: transverse aortic constriction)は、マウスの慎重な麻酔が必要な実験で、容易ではない。時間をかけて慎重に研究を進め、心筋、骨格筋の metabolome 解析、遺伝子発現解析を行いながら、詳細に検討を進める。また、C2C12 細胞を用いた in vitro 系で、筋肉分化に関する新しい知見を得たことから、25年度は、この解析も進める必要がある。特に、力刺激によって、どのような遺伝子が誘導/抑制されるか、網羅的に把握するため、RNA-seq を含めた詳細な解析を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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