2012 Fiscal Year Research-status Report
テトラヒメナのアクチン重合阻害剤に対する耐性能獲得機構の研究
Project/Area Number |
24657128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沼田 治 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50189354)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | テトラヒメナ / アクチン / ラトランキュリンA / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
平成24年度はラトランキュリンA(Lat-A)処理によって、発現量が急激に増加するACT2 遺伝子に着目して、「ACT2 遺伝子の発現誘導と薬剤耐性の因果関係の検証」をめざした。まず、ACT2遺伝子破壊株を作製し、表現型を調べることに着手した。ACT2遺伝子破壊株で、Lat-A処理を行った場合、Lat-A耐性機能が獲得されるか否かを調べるのである。しかしながら、ACT2遺伝子破壊株の作成は非常に難しいことがわかった。この結果はACT2遺伝子破壊株が致死であること、すなわちACT2 蛋白質が生存に不可欠であることを示唆する。そこで、ACT2 遺伝子過剰発現株の作成に着手した。ACT2 遺伝子過剰発現株が初めからLat-A耐性能を持てば、ACT2タンパク質がLat-A耐性であると結論できるからである。この実験は現在進行中である。 さらに、「薬剤耐性機構の誘導のオミクス解析」を進める準備をしている。すなわち、Lat-A処理を行った細胞とそうでない細胞の mRNA について、次世代シーケンサーを用いて網羅的に調べるのである。両者の mRNA の発現パターンを比較することで、どのような遺伝子の転写がLat-A処理により動くかを調べる。Lat-A処理時に発現量が上がる遺伝子こそ、Lat-A耐性獲得に関わっていると考えるからである。 また、テトラヒメナをアクチン重合阻害剤であるLat-Aで処理すると、分裂溝のくびれの進行は阻害されないが、食胞形成は阻害される現象について論文にまとめ、Zoological Science誌に投稿した。この結果は、テトラヒメナの収縮環を構成するアクチン細胞骨格はLat-A に非感受性である可能性、あるいはテトラヒメナの細胞質分裂にはアクチン細胞骨格が関与していない可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の遅れは、ACT2遺伝子破壊株の作成が非常に難しいことによる。ACT2遺伝子破壊株の作成が困難であることは、単なる技術的な問題なのか、あるいはACT2 蛋白質が生存に不可欠であるのかを考慮しながら、ACT2遺伝子破壊株の作成を慎重に進めていきたい。もし、ACT2遺伝子破壊株が致死であり、ACT2 蛋白質が生存に不可欠であるならば、テトラヒメナのアクチン重合阻害剤に対する耐性能獲得機構の解明のためには、別の方法を試みなければならない。すなわち、次世代シーケンサーを用いた「薬剤耐性機構の誘導のオミクス解析」である。
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Strategy for Future Research Activity |
Lat-A処理を行った細胞とそうでない細胞の mRNA について、次世代シーケンサーを用いて網羅的に調べる。両者の mRNA の発現パターンを比較することで、どのような遺伝子の転写がLat-A処理により動くかを調べる。Lat-A処理時に発現量が上がる転写制御因子とアクチン結合蛋白質の遺伝子に着目する。以上により同定した転写制御因子あるいはアクチン結合タンパク質については、その遺伝子の機能解析(遺伝子破壊および過剰発現など)を行い、「アクチン重合阻害剤に対する耐性能獲得機構」を明らかにする。 文部科学省科学研究費新学術領域研究「ゲノム支援」に支援申請を行い、次世代シークエンサーを使用して、Lat-A処理を行った細胞とそうでない細胞の mRNA について、網羅的に調べたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は次世代シークエンサー使用料と得られたデータの解析費用に使用する。
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