2012 Fiscal Year Research-status Report
軟骨魚類サメの鱗の細胞系譜解析ー脊椎動物の骨格の起源の解明ー
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24657148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 敦子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20376552)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格の起源 / 軟骨魚 / 鱗 / 細胞系譜 |
Research Abstract |
脊椎動物の最大の特徴の一つは、カルシウムの貯蔵庫を兼ねたリン酸カルシウムからなる骨を持つことである。これまで骨の起源に関しては「無顎類の化石種がまとっていた最古の骨格(甲冑)が歯様組織であったことから、神経堤によってもたらされた」とする“神経堤説”が広く受け入れられてきた。しかし骨格の細胞系譜解析は羊膜類でしか行われておらず、この説を裏づける実験データは非常に乏しかった。 申請者は最近、甲冑と同じ外骨格である鱗や鰭条が神経堤由来ではなく体節由来であることを見いだした(Shimada et al, Nature Communications, 2013)。しかし骨の起源を推定するためには、現存する最古の外骨格であり、甲冑の組織構造の特徴をほぼそのまま保っている軟骨魚類のサメの鱗(皮歯)の由来する組織を調べる必要がある。そこで、実験発生学技術がほとんど開発されていないサメにこの技術を導入し、サメの鱗の骨形成細胞がどの胚組織から由来するかを明らかにすることが本研究の目的である。平成24年度は、トラザメ胚の基本的な胚操作技術の開発を行うとともに、鱗の正常発生過程など細胞系譜解析に必要な基礎的な知見を得ることを目的に実験をおこなった。その結果、トラザメ胚は紙ヤスリで殻を薄くすることによって、中の胚が可視化できること、その薄い部分に30ゲージ針を使って微笑な穴を数カ所あければ、胚が浸っている卵液を一時的に抜くなど、腹腔手術の要領である程度の胚操作ができることがわかり、ニワトリ胚のエレクトロポレーションによる遺伝子導入技術をサメに応用できる可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、トラザメ胚の基本的な胚操作技術の開発を行うとともに、鱗の正常発生過程など細胞系譜解析に必要な基礎的な知見を得ることを目標としていた。サメ胚は殻から取り出すと死んでしまうため、殻に胚を入れたまま胚操作する必要がある。24年度は胚を外から可視化する簡便な方法を見いだすことができ、さらに殻をはがさずに卵液を抜いたり入れたりする方法を確立できたので、研究も目標はおおむね順調に伸展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
トラザメ胚の神経堤(神経堤が移動する以前の背側神経管)または体節に、30ゲージ注射針を用いてplasmid DNAを注入し、エレクトロポレーションで細胞内に導入する方法を確立する。注入したDNAがゲノムに組み込まれやすいように、βアクチンやユビキチンなどのユビキタスプロモータ-EGFPにTol2(トランスポゾン)配列を付加したplasmidとトランスポゼース発現plasmidを同時に注入する(Sato et al, 2007)。プロモーター配列については、まずメダカの配列を試み、導入した組織でGFP蛍光が認められない場合はトラザメの配列を用いる。恒常的にGFPが発現することを確認したら、胚を育てる。鱗が形成されたら、鱗組織をGFP抗体で染色し、切片を作製してGFP陽性の骨形成細胞を同定する方法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、サメ卵への遺伝子導入用法を確立するため、コンストラクションのための試薬やプライマー作成、配列解読、エレクトロポレーション用具購入などに研究費を使用する予定である。
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