2013 Fiscal Year Research-status Report
軟骨魚類サメの鱗の細胞系譜解析ー脊椎動物の骨格の起源の解明ー
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24657148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 敦子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20376552)
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Keywords | 骨格の起源 / 軟骨魚 / 鱗 / 細胞系譜 |
Research Abstract |
脊椎動物の骨は無顎類の化石種がまとっていた最古の骨格(甲冑)が歯様組織であったことなどから、神経堤によって発明されたと広く考えられてきた。本研究では、甲冑の組織構造の特徴をほぼそのまま保っている軟骨魚類のサメの鱗(皮歯;現存する最古の骨格)の由来する組織を明らかにすることによって骨格の起源を探る。 申請者の仮説は、象牙質やエナメル質を持つ歯にそっくりなサメの鱗であっても、神経堤ではなく、体節に由来するというものである。平成25年度は、この仮説の妥当性を発生学的に検討した。体節は分節後、筋節(筋肉)と皮筋節(筋肉と真皮)と硬節(脊椎骨)の3種類の組織に分化することが知られている。もしサメの鱗の骨細胞が体節由来であるとすれば、真皮を作る皮筋節細胞から供給されるはずであるが、そもそも魚類の体節の分化過程は不明な点が多く皮筋節の存在が証明されたのもごく最近である(Hollway et al., 2007)。そこでまずメダカを用い、皮筋節マーカーであるPax3/7発現細胞の挙動を追った。Pax3/7発現細胞は体節分節後10体節前後で体節全体の水平回転運動によって体の表面に現れて体側に分布した。この細胞行動はゼブラフィッシュと同様であった。また、発生後期ではPax3/7の発現は低下するが、zic1は引き続き皮筋節で強く発現維持されることがわかり、キメラ解析によって、zic1発現細胞は一度背側端で増殖して間葉集団を作った後に鰭条の骨細胞に分化することが示された。これらから、メダカとゼブラフィッシュという系統的に離れた魚類でも体節の分化過程が極めて保存されていること、また、体節から由来する皮筋節細胞の少なくとも一部は鰭条の骨細胞の前駆細胞であることが示唆され、サメの鱗が体節由来であることを支持する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、胚操作の確立されていないサメで遺伝子導入が可能かどうかを検討した結果、可能性が高いことは示された。平成25年度はサメの鱗がどこの組織に由来するのか当たりをつけるために、実験発生学の材料として確立されているメダカを利用し、外骨格の細胞系譜を詳細に追った。しかし、実際にサメへの遺伝子導入を行う実験はまだ成功しておらず、従って本研究はやや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、平成24年度、25年度の成果を発展させて、実際にトラザメ胚に対して遺伝子導入を行う予定である。βアクチンプロモータ-EGFPにTol2トランスポゾン配列を付加したplasmidとトランスポゼース発現plasmidを同時に導入する(Sato et al, 2007を参照)。βアクチンプロモーター配列は、異種(ゼブラフィッシュ)でも発現が確認されているメダカの配列を用いる。卵液を除くと胚が死ぬことが予想されるため、卵液は取り除けないこと、また電極を挿入できる大きさの穴を空けると後の発生が難しくなると予想されることなどから、遺伝子導入にはエレクトロポレーションではなく、リポフェクタミンを用いる。導入する胚は発生ステージ25前後に達したものを用いる予定である。神経堤(神経堤が移動する以前の背側神経管)または体節に、30ゲージ注射針を用いてplasmid DNAとリポフェクタミンを注入し、細胞内に導入する。恒常的にGFPが発現することを確認したら、胚を育てる。鱗が形成されたら、鱗組織をGFP抗体で染色し、切片を作製してGFP陽性の骨形成細胞を同定する。以上の方法を用い、神経堤と体節、どちらをラベルした場合にGFP陽性の鱗が形成されるのかを判定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度購入した試薬の購入費が予定額より安かったため。 今年度に必要となる試薬の購入費に当てる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] A Neural Mechanism Underlying Mating Preferences for Familiar Individuals in Medaka Fish2014
Author(s)
Teruhiro Okuyama, Saori Yokoi, Hideki Abe, Yasuko Isoe, Yuji Suehiro, Haruka Imada, Minoru Tanaka, Takashi Kawasaki, Shunsuke Yuba, Yoshihito Taniguchi, Yasuhiro Kamei, Kataaki Okubo, Atsuko Shimada, Kiyoshi Naruse, Hiroyuki Takeda, Yoshitaka Oka, Takeo Kubo, Hideaki Takeuchi
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Journal Title
Science
Volume: 343
Pages: 91-94
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Modular development of the teleost trunk along the dorsoventral axis and zic1/zic4 as selector genes in the dorsal module2013
Author(s)
Kawanishi, T., Kaneko, T., Moriyama, T., Kinoshita, M., Yokoi, H., Suzuki, T., Shimada, A. and Hiroyuki, H.
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Journal Title
Development
Volume: 140
Pages: 1486-1496
DOI
Peer Reviewed
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