2012 Fiscal Year Research-status Report
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24657151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
垣内 康孝 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 講師 (90396268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 浩司 独立行政法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部組織工学研究室, 室長 (80456194)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 動物 / 細胞 / 分化 / 三次元培養 / 粘菌 |
Research Abstract |
【混合ペプチドゲルの開発】16merのRADA-4ペプチドと、新たに合成した4merのRADA-4ペプチドを用いて混合ゲルを作成し、様々な濃度でのゲル化条件の検討、および物理化学特性の測定を行った。 【ペプチドゲルによる細胞分化・細胞応答傾向の解析】RADA-16ゲルの三次元構造の詳細をゲル粒度分析(動的光散乱法)および画像解析(二次元フーリエ解析)により解析し、RADA-16の粒子サイズが0.01%付近で変化することを明らかにした。RADA-16は酸性条件や高温下でベータ構造変換を生じると報告されており、類似した構造変換が濃度依存的にも生じると示唆される。 【遺伝子発現解析】単球分化のマーカー遺伝子lyn(RADA-16培養で発現上昇)が脂質ラフトマーカーでもある点に着目し、ラフトを構成するコレステロール(単球分化誘導因子でもある)の動態に着目して遺伝子発現解析ならびにコレステロール動態の生化学的分析を行った。その結果、細胞内コレステロール排出の鍵因子であるnpc-2の発現レベルの低下、細胞内コレステロールの高度な蓄積(通常の10倍)、を見出した。さらにHL-60細胞へのコレステロールの投与が三次元培養とほぼ同様の遺伝子発現プロファイルをもたらすことを見出し、コレステロールがRADA-16三次元培養による細胞分化シグナル伝達の一因子であることをほぼ突き止めた。以上の結果をこれまでの成果と併せ、学術雑誌に発表した(Biochemical and Biophysical Research Communications 433 (2013) 298-304)。 【粘菌細胞を用いた解析系の立ち上げ】細胞-基質の接触による初期細胞応答に特化して解析するためには、細胞分化を生じない系を用いるほうが良い。このことから細胞性粘菌および真正粘菌を用いた解析系を立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「混合ペプチドゲルの開発」については、16merのRADA-4ペプチドと、新たに合成した4merのRADAペプチドを用いて混合ゲルを作成し、様々な濃度でのゲル化条件の検討、および物理化学特性の測定を実施中である。混合比率による物性変化等について結果が得られつつあり、おおむね順調に進展していると考えている。 「ペプチドゲルによる細胞分化・細胞応答傾向の解析 (パイロット的解析)」については、混合ゲルを用いた解析は現在準備している。さらに、RADA-16ゲル単独でのHL-60培養による細胞分化・細胞応答傾向の解析について、研究実績の概要でも述べたとおり、コレステロール関連遺伝子、コレステロール動態、コレステロール投与の効果について解析を進め、コレステロールがRADA-16による三次元構造刺激のシグナル伝達因子であることをほぼ突き止めることができた。これらの結果は学術論文に報告することができたので、研究は順調に進展していると考えている。 また、「モデル生物である細胞性粘菌を用いた解析系」に関して、細胞性粘菌Dictyostelium discoidiumおよび真正粘菌Physarum polycephalumの培養・解析系を立ち上げた。平成25年度の遺伝子発現解析ならびに時空間細胞ダイナミクスの解析に向けて順調に進んでいると考えている。 以上のことから、「研究の目的」に鑑み、研究は全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【分化傾向に違いのあるゲル間の詳細な構造・物性解析】細胞分化性向を持つことが示された0.01%付近の濃度(前述成果論文)でRADA-16とRADA-4の混合ゲルを作成し、混合比による構造・物性の違いを解析して相転移点を探る。 【ゲル相転移点での細胞応答の解析】 平成24年度に立ち上げたモデル生物解析系(細胞性粘菌および真正粘菌を用いた解析系)により細胞応答の解析を進める。細胞分化機構には内因的要因を多く含み、これらから基質-細胞界面での初期応答を切り分けるのが難しいヒト細胞に対して、細胞性粘菌Dictyostelium discoidiumおよび真正粘菌Physarum polycephalumは(ヒト細胞と比較して)複雑な分化システムを持たないと考えられるうえ、細胞ダイナミクスの観点から研究が進んでおり初期応答に関わるインターフェースを解析するのに好適な材料である。これらの材料を用いて混合ゲル下での培養を行い、(1)遺伝子発現解析および関与する遺伝子群/遺伝子発現ネットワークの特定、(2)細胞膜近傍の細胞骨格配向の顕微鏡解析、(3)細胞膜の巨視的形態変化の顕微鏡解析、(4)時空間細胞ダイナミクスの解析(細胞形状・細胞運動・細胞厚変化のダイナミクス)、を行う。ゲル濃度やゲル構造相転移点での変化に注目する。 以上を通して「細胞が足場の立体構造を捉える仕組み」「(分化を含め)細胞応答シグナルに転換する仕組み」の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【次年度に使用する予定の研究費が生じた状況】平成24年度、ヒト培養細胞(HL-60)を用いた解析に必要となる炭酸ガスインキュベータは学内既存の機器を借用できたため、当該機器は購入しなかった。一方、新たに立ち上げることになった細胞性粘菌および真正粘菌の培養を実施するため、必要となるインキュベータを購入した。これら購入品目の変更に伴い、記載の次年度使用額が発生した。 【次年度の研究費の使用計画】細胞性粘菌および真正粘菌を利用した基質-細胞応答の解析、特に時空間細胞ダイナミクスの解析に向け、ヒト培養細胞とは異なる顕微観察・解析システムが必要なためこれを購入する。具体的には細胞への刺激応答解析装置(化学刺激・電気刺激・光刺激および顕微観察記録装置、画像解析ソフトの作成)のカスタム構築費用である。さらに残余額が発生した場合は、次世代シーケンサを用いた遺伝子発現解析の実施規模を拡大して、研究目標を達成できるよう効果的に使用する。
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