2012 Fiscal Year Research-status Report
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24657162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三浦 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10173973)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性決定機構 / XY型 / ZW型 / カエル |
Research Abstract |
我が国には、性決定機構がXY型とZW型のタイプを地域集団に有するツチガエルが生息しており、近年、両タイプの境界地域において接触が生じた結果、性決定の仕組みが一方に収束した集団(新ZW集団)を発見した。本研究では、この集団を遺伝学的、実験発生学的に解析し、接触によって展開された性決定機構変換の実態を解明することを目的とする。 平成24年度は、以下の結果を得た。 1.XY型とZW型の集団が接触している地域を中心として合計27集団について、ミトコンドリアCyt-B遺伝子と性決定型を調べた。その結果、琵琶湖西岸から南へ下る6つの集団が新ZW型集団として確認された。 2. 次に性連鎖遺伝子Sox3遺伝子の上流に存在するマイクロサテライトを解析し、新ZW集団の性染色体の起源を推測した。その結果、まず、W染色体とX染色体については、ZW集団のW染色体はすべて1つの対立遺伝子M4をもち、XY型集団のX染色体はM1~6までの6つの対立遺伝子を有していた。新ZW型集団のW染色体はM1、3、5の対立遺伝子を持っていたことから、そのW染色体はXY型集団のX染色体由来であることを示している。一方、新ZW型集団のZとY染色体については、ZW型集団のZ染色体の対立遺伝子が多く見られ、わずかにXY型集団のY染色体の対立遺伝子が確認された。これは、新ZW型集団のZ染色体は主にZW型集団のZ染色体に由来し、わずかにXY型集団のY染色体が導入されたことを示している。 3. ZW型2集団とXY型2集団を選び、相互交配を行い、性比を調べた。ZW♀xXY♂の5つの交配では、♀の比率が22.2-56,1%、平均41.4%と雄に性比が傾き、XX♀xZZ♂の4つの交配では、59.2-100%、平均79%と性比が雌に大きく偏った。性比偏りの原因は、平成25年度に各個体の性染色体構成を調べる事で推測が可能になると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次の3つの実験計画を立て、その概ねを達成できた。 1)ツチガエルのXY型集団とZW型集団、そしてその間に位置する新ZW集団を合計27集団からカエルを採集し、それぞれのミトコンドリアCyp-B遺伝子と性決定型を解析した。 2)27集団について、性連鎖遺伝子Sox3の上流域に存在するマイクロサテライトを解析し、新ZW集団の性染色体の由来を推測できた。 3)XY型とZW型集団の交雑を行い、正逆で性比の偏りが異なることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い実験を推進する。平成25年度はZWxXYの交配で生じた4つの遺伝子型のうち、WYとZXの性を確認する。さらに、それらの個体をZWやWYと交配してWWとYY個体を作成し、その致死性を調べることでWとY染色体上に遺伝子退化が生じているかどうかを調べる。この実験によって、WWが致死であれば、XY型からZW型へ性決定機構が変換した新ZW型集団においてZW型集団由来のW染色体が存在しない理由を説明できる。また、YYが致死であれば、同様に新ZW集団のZ染色体が主にZW型集団のZ染色体由来であることも説明ができる。平成26年度には、X染色体がW染色体として機能しうるかどうかを明らかにするため、ZX♀xZZ♂の交配を行い、その子供のZXが雌、ZZが雄になるかどうかを確認する。同様に、XX♀xZX♂の交配も行い、Z染色体がY染色体として機能しうるかどうかも確認する。以上の実験結果を総括して、XY型からZW型へ性決定機構が変換する進化仮説を提唱する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は直接経費120万円について、消耗品や機器の物品費に50万円、研究成果の発表および地域集団におけるカエルの採集に旅費として30万円、カエルや幼生の飼育のための雇用等の謝金・人件費に35万円、論文の英文校正や別刷り代としてその他5万円を使用する。
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Research Products
(14 results)