2012 Fiscal Year Research-status Report
ファイロティピック段階における形態の個体差とロバスト性
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24657164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀田 耕司 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (80407147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | dwarf / size / scaling / 国際情報交換 台湾 / ファイロタイプ / 形態進化 / 脊索動物 / 尾芽胚 |
Research Abstract |
カタユウレイボヤの未受精卵を雌性前核が認識できるように染色し,ガラスニードルで様々な大きさに切除した.雌性前核がある切除卵の直径を測ってから受精させ,矮小化尾芽胚を作製した.作製した矮小化尾芽胚を固定,染色し共焦点レーザー顕微鏡により複数観察して断層画像を得た.得られた断層画像を基に各細胞の輪郭抽出を行い矮小化尾芽胚の3次元CGモデル(3DVE)を作製した.さらに3DVEを利用して野生型の正常な大きさの尾芽胚と比較し各組織の体積,細胞数の違いを定量比較した.また,未受精卵のサイズが小さくなったことによって各組織や細胞がどのような変化をしたか調べた.その結果,カタユウレイボヤの未受精卵を切除して受精させると,発生が正常に進んだカタユウレイボヤ矮小化尾芽胚が得られ,野生型の尾芽胚と比較すると個体の長さが~80%のものが得られた.続いて矮小化尾芽胚の3次元CGモデル(3DVE)を作成し各組織の体積,細胞数を詳細に調べた結果,興味深いことに個体全体に対する組織体積の割合は通常の尾芽胚と同じ割合で保たれていることがわかった.さらに,細胞数は変わらないが体積が減る組織(脊索、筋肉、内胚葉など)と,体積は変わらないが細胞数が減る組織(表皮、間充織など)があることを定量的に示すことができた.以上までの成果をまとめ、Comparative Anatomy of Ascidian Miniature Tailbud. Riken CDB meeting 2013 (2013年3月4-6日)において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、カタユウレイボヤ尾芽胚の形態を維持するのに細胞・組織レベルで拘束されている形と拘束が解除されている形を明らかにするために、 次の2つの目標を掲げた。①矮小化幼生(ドワーフ幼生)の作成を行い、著しく大きさに個体差のあるドワーフ幼生を作成する。また、幼生形態が保てなくなるぎりぎりの卵細胞の体積を求める。次に得られたドワーフ幼生の、②胚の3次元イメージングおよびコンピュータ・グラフィック(CG)化を行う。これまでに上記2つの目標は十分達成されており、①に関しては、未受精卵のサイズが76%の個体を得ることができた。②に関しては、Notochord、Muscle、Endoderm、TVCsなどの個体サイズが変化しても細胞数が変化しない組織においては、細胞一つ一つの体積を減らすことによって組織形態を維持している。またCNS、Epidermis、Mesenchymeなど細胞数が減少する組織においては細胞一つ一つの体積を変えないで細胞数を変化させることによって形態を維持していることがわかった。しかしPG cellに関してはこれらには当てはまらない結果となった。以上のように、次年度に続く興味深い結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、Dwarf尾芽胚の3次元CG化により細胞レベルでの幾何情報(細胞の接触面積、正常胚の細胞配置との比較(例えば脳胞の行・列数の違い等)が網羅的に抽出できた。今後は、これらの違いを詳細に注目し、いつの時期に形態の破綻が生じるのか、タイムラプスイメージング、細胞分裂パターンの正常胚との違いなどさらに詳細な比較を行う。変化のあった組織の配置や幾何情報が遺伝子の時間・空間的な発現領域の変化に起因しているのか、あるいはモルフォゲンの分布と濃度(Wnt5は後方の極性にグラジェントを作ることで作用していると言われている)が個体サイズが変わったときにどのように変化しているのかを明らかにするために、組織パターニングに関わる遺伝子のin situハイブリダイゼーションや抗体を用いてそれぞれ組織ごとの細胞の並びや細胞数、細胞配置、隣接する細胞といった情報はもとより、個々の細胞の幾何学的情報(細胞表面積、体積、接触面積、扁平度、球形度等)を網羅的に把握する。ドワーフ幼生を作成することで分泌型因子の微細な影響も定量的に明らかにできるのではないかと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
個体形状のモデル化のために、次年度において変化のあった組織の配置や幾何情報を可視化するため、CG化したホヤ胚から3Dの模型を作成するために研究費を使用する予定である。 また、個体サイズが異なるマボヤと他の脊索動物であるナメクジウオを用いた種間比較を行うために、浅虫臨海実験所やナメクジウオの生殖時期に合わせ台湾中央研究院においてナメクジウオサンプリング及び胚のマニピュレーションを実施するための旅費として300千円/年を計上した。研究費を使用する予定である。脊索動物の祖先型に近いと考えられるナメクジウオ胚のとる形態維持の戦略をホヤと比較し、その保存性をみることで器官形成期の形が進化的にどのように維持されているのか細胞のコアとなるプロセスを割り出し“ファイロティピック段階とは何か、形を維持させ、ロバスト性を保つために必要な細胞ごとの要因とは何か”といった疑問に対する答えを得る予定である。 以上研究成果をまとめ、国内・国外学会にて発表するために成果発表のための旅費(300千円/年)を必要とする。また、組織のコンピュータモデリングのためにアノテーションのアルバイトとして大学院生2人を雇用する(時給1000円×50時間×2人/年)。
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