2012 Fiscal Year Research-status Report
単細胞生物から多細胞生物への進化における鍵因子の探索
Project/Area Number |
24657167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
長谷部 光泰 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 教授 (40237996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 智明 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
石川 雅樹 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00586894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多細胞進化 / オーキシン / ヒメツリガネゴケ / 側方抑制 |
Research Abstract |
ヒメツリガネゴケにおいて、幹細胞化抑制シグナルを特定することを目的として、以下の解析を行った。 (1)オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能するか:オーキシンによって分解されるAux/IAAのドメイン IIにYFPを融合したタンパク質が恒常的に発現する形質転換体を作成して、タイムラプス解析を行い、幹細胞化におけるオーキシンレベルの時空間的変化を調べた。その結果、幹細胞化する細胞ではオーキシンが低いレベルに維持され、幹細胞化しない細胞ではオーキシンレベルが上昇することが推察された。また、このオーキシン濃度勾配は、幹細胞化する細胞から幹細胞化しない細胞へオーキシンが輸送されることによって引き起こされるらしいことも分かった。これらのことは、オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能していることを示唆している。次に、オーキシン排出担体PINにRFPをノックインした形質転換体を用いて、PIN-RFPの発現解析を行ったが、そのシグナルはほとんど検出されなかった。そこで、別のオーキシン排出担体であるPGPにRFPをノックインさせた形質転換体を作成した。現在、幹細胞化におけるPGP-RFPの発現解析を行っている。 (2)幹細胞化抑制因子としてのペプチド探索:幹細胞化抑制因子としてオーキシンが有力候補になったため、幹細胞化におけるオーキシン分布変化の分子機構の解明に集中した。 (3)トランスクリプトーム解析に基づく幹細胞化抑制因子の探索:オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能するのであれば、オーキシン応答性の幹細胞化経路が抑制されることが予想されたため、少量の細胞を使ったトランスクリプトーム解析の開発を進めた。1細胞のみから全RNAを含む細胞抽出液を回収するマイクロキャピラリを用いた実験系を構築し、微量mRNAから超並列シークエンサー用のライブラリー作成法についてもほぼ確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーキシンが側方抑制因子候補である可能性が強く示唆される実験結果を得ることができ、来年度以降の研究の大枠が決定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験は大学院生Liechi Zhang(連携研究者)と石川が行い、石川と長谷部が研究を総括する。 (1)オーキシンが幹細胞化抑制シグナルの実体かを調べる実験 (1-1) 昨年度に引き続き、幹細胞過程におけるオーキシン排出担体であるPGPの発現解析をする。PGPが関与する可能性が高い場合は、オーキシンセンサーラインのPGP遺伝子を破壊し、オーキシンの分布変化、および幹細胞化の様子について解析する。また、オーキシン輸送阻害剤を用いて幹細胞化におけるオーキシン分布変化についても調べる。(1-2) 幹細胞化する細胞でのオーキシンレベルの減少が、オーキシン排出だけでなく、オーキシンの不活性化によっても引き起こされる可能性が考えられる。そこで、オーキシン不活性化を制御するGH3タンパク質についても着目し、GFPノックインラインを用いて、幹細胞化における時空間的発現解析を行う。またGH3遺伝子破壊株を作成し、その表現型についても調べる。(1-3) 幹細胞化過程でオーキシンが合成される細胞を特定するため、オーキシン合成を促進する転写因子SHI、およびオーキシン合成酵素YUCCAをコードする遺伝子にGFPをノックインしたラインを作成し、その発現解析する。 (2)トランスクリプトーム解析に基づく幹細胞化抑制シグナルの機能解析 マイクロキャピラリを用いて、葉から2細胞あるいは3細胞を単離して培養する。培養開始後24時間目と36時間目で、幹細胞化する細胞、幹細胞化しない細胞から細胞抽出液をそれぞれ回収し、超並列シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行う。得られたデータは、分担者である西山が行う。 (3)上記の解析結果に基づき、幹細胞化におけるオーキシン分布変化をシュミレーションしモデル化し、オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能するのか検討する。以上の結果をまとめ、論文として公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の860,245円については、ペプチドシグナル探索のため、技術職員によって手で細胞を単離するため雇用経費として支出する予定であった。しかし、ペプチドシグナルよりもオーキシンシグナルによって側方抑制が起きている可能性が高くなり、ペプチド解析に代えて、オーキシン輸送、合成、不活性化に関わる因子の解析を平成25年度に新たに行うことが必要となったため、当該研究費が生じた。 前年度の研究結果に基づいて、オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能するのかを明らかにするための分子生物学実験およびトランスクリプトーム解析を進める。また、研究成果を国内外に発表するため、学会発表および論文発表を行う。そこで、以下のように物品費、学会発表のための国内旅費、および論文投稿料に研究費(計2,460,245円)をあてる。 物品費:ヒメツリガネゴケの形質転換体作成のための分子生物学実験用試薬の購入に1,060,245円、トランスクリプトーム解析のための超並列シークエンサー用試薬に1,000,000円を計上する。 国内旅費:研究成果を国内学会で発表するための経費100,000円を計上する。 その他(論文投稿料):研究成果を取りまとめて、論文を投稿するための経費300,000円を計上する。
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