2012 Fiscal Year Research-status Report
手による情報獲得に適した姿勢・行動の生理人類学的研究
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24657182
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小谷 賢太郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (80288795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝尾 隆文 関西大学, システム理工学部, 助教 (10454597)
鈴木 哲 関西大学, システム理工学部, 准教授 (50306502)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 触覚情報 |
Research Abstract |
本研究グループでは手による情報獲得に関連する中枢神経系、自律神経系の生体計測技術や解析・モデリング技術、認知科学、アフォーダンスといったアプローチにより、ヒトと環境のエコロジカル・インタフェースの設計・構築を目指すことを目的とする。 本年度は非接触で刺激を呈示可能な空気噴流を用いた触覚ディスプレイを用いて呈示圧力,刺激間距離,刺激間の遅延時間を変化させた触覚の二刺激弁別実験を行うことにより,呈示圧力と刺激間の遅延時間が触覚の空間分解能に与える影響を求実験を行った.被験者は,非利き手の手掌を空気噴流射出部にかざした状態で実験を行う.機械の駆動音や空気の噴流音などで刺激の違いを判別できないように,被験者は耳栓を装着した上でヘッドフォンを装着し,ホワイトノイズを流すことで聴覚による影響を排除した.験者は成人男性8名(平均年齢21±1才)であった.実験は,被験者の非利き手,手掌の基節骨下部に対して刺激を呈示した.刺激は,あらかじめ設定されたノズルから呈示される単一刺激を二箇所,表2に示す条件に沿って呈示し,これを1試行とした.被験者にはこの呈示された二箇所の刺激を同位置に感じたか,そうでないかを二者択一で回答させた.その結果,二点弁別閾推定に使用した回帰式での平均寄与率は89%であった.二点弁別閾は,遅延時間条件0s条件では圧力が大きくなるごとに二点弁別閾が低下した.しかし,遅延時間を与えると圧力に関係なく二点弁別閾は同様の値となった.また,圧力に関係なく,遅延時間を与えると遅延時間0s条件よりも二点弁別閾が低下した.空気噴流刺激での二点弁別閾は遅延時間0s条件において平均で15.2mm,遅延時間付与条件では6.1~7.8mmとなった.先行研究の実験結果と比較すると,空気噴流刺激での二点弁別閾は,遅延時間0s条件では約2倍,遅延時間付与条件では最大で3倍大きい結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手による情報獲得のための基礎実験を行うための触覚情報提示装置が,当初予想より自由度の高いもの,すなわち,呈示圧力は電空レギュレータにより,1kPa単位で設定可能であり,最大で900kPaの圧力が呈示可能であるものが構築できた点が本研究の推進の大きな原動力となっている.また,電磁バルブの開閉,電空レギュレータによる圧力設定の制御は,PCに組み込んだデジタル入出力ボードを利用しているため,実験準備も当初計画で構想していたものより,複雑な情報が提示できる.触覚ディスプレイの刺激呈示部分は,直径1mmの孔が12×12のマトリクス状に並んでおり,刺激呈示に関しては空気噴流の圧力設定,呈示時間を144本の各ノズルで独立して制御可能である構造としたため,今後手形状認識実験を行うために十分詳細な位置認識を可能としている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は携帯端末のような情報機器を使用する際の手の動きの特徴抽出と,姿勢に関する研究に主眼を置く.予備実験では携帯端末の画面特性(端末の大きさと文字の大きさ)を変化させた時の携帯端末操作時のヒトの上肢姿勢の角度変化を評価することで,携帯端末使用時における上肢姿勢を客観的に評価できると考え,携帯端末使用時において端末と画面に表示させる文字の大きさを変化させたときの上肢姿勢の角度変化を評価しようとした.その結果,端末の大きさの影響は10インチ条件までは作業姿勢を維持することが可能であり,13インチ条件では端末の重さが影響して,作業姿勢を維持することが困難なため,携帯端末を手で保持せず,その負担を大腿部で支える傾向があることがわかった.本実験では男女各5名と広い体格のレンジを意図して実験に参加してもらったが,実際に適切な携帯端末の大きさ(重さ)を評価するためには利用者の体型や筋力との関係を知ることが重要になると考えられる.また,文字の大きさの変化は今回の実験からは直接的に姿勢変化につながる要因と特定することはできなかったが,さらなる評価を行うことで文字の大きさの効果を検証することができるのではないかと考えられる.さらに,作業時間の時間経過に伴って,操作開始から継続して上肢の緊張状態を増加させている様子が観察され,継続的な作業時間がMSD発症のリスクと関与している可能性が示唆された.今後は筋負担の度合いを筋電図計測で定量的に評価し,時間経過による筋負担の度合,つまり姿勢の変化による実際の筋負担の変化をとらえることにより,更なる分析を進めたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
触覚情報獲得時の手形状分析ツールが比較的安価に構築できたことから,ソフトウェア政策に当初充当しようと考えていた金額に相当する繰越金が生じた。そこでこの繰越金を有効に生かすために、本年度行おうとしている実験を拡張し,筋活動レベルまで評価できるよう実験系を構築しようと考えている.また,実験条件が増加することから,データ解析や被験者に対する報酬についても有効に使用して,当初計画よりもさらに一般的な傾向を導き出すことに挑戦しようと考えている.
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