2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24657183
|
Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 滞在温湿度 / 衣服内温湿度 / クーラー使用時間 / 歩行量 / 高齢者 / アセチルコリン誘発性発汗 / 皮膚温度感受性 |
Research Abstract |
本研究では,夏季における70歳代の高齢者および若者の日常生活下での温熱的生活環境実態(滞在温湿度,衣服内温湿度,歩行数,クーラー使用時間など)を比較検討した.なお,各被験者の温熱的生活環境は3日間の連続測定データに基づき,屋内に滞在した就寝を除く時間帯(屋内と略す),就寝した時間帯(就寝),屋外に滞在した時間帯(屋外)に区分して,データを整理した.その結果,夏季の温熱的生活環境には,高齢者において性差が観察されなかった.高齢者と若者の比較において,滞在温度では屋内と全体(3日間の平均値)で,滞在湿度ではいずれの生活時間区分でも高齢者が若者より有意に高かった.クーラー使用時間は屋内・就寝とも高齢者が若者より有意に短く,クーラー使用時の滞在温度は屋内・就寝とも高齢者が若者より有意に高かった.衣服内温度では屋内と全体で,衣服内湿度はいずれの生活区分時間でも高齢者が若者より有意に高かった.これらの結果は,屋内でのクーラー使用時間が短く,使用時の室内温度が高いことに起因して,高齢者が若年者より高温高湿のより熱中症に罹患しやすい屋内環境に滞在していることが示唆された. 次に,高齢者における温熱的生活環境実態と体温調節能力(アセチルコリン誘発性発汗・皮膚温度感受性)との関連性を検討した結果,クーラー使用時間が大腿の発汗量(r=-0.452)および単一汗腺あたりの汗出力(r=-0.437)と,歩数が温覚閾値の全身平均熱流束差(r=0.384)と,それぞれ有意な相関関係を示したが,他の温熱的生活環境実態と体温調節能力との間には有意な相関関係はみられなかった.これらのことから,温熱的生活環境の改善だけでは体温調節能力の老化を遅延・抑制することが難しいため,現状では高齢者に対しては温湿度計を活用した生活や運動トレーニングを伴う暑熱順化などの熱中症予防策が提案される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は研究実施計画通り,70歳以上の高齢者における夏季の日常生活下での温熱的生活環境実態(滞在温湿度,衣服内温湿度,歩行数,クーラー使用時間など)を若者との比較で明らかにした.さらに,すべての高齢者で発汗テストや皮膚温度感受性テストも実施でき,それらの結果と温熱的生活環境実態指標との関連性も検討できた.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究で見出した,高齢者の8月における温熱的生活環境特性(高齢者が若者より高温高湿の屋内環境に滞在している)がどの時期から出現するのか検討する.すなわち,本年度は5月~10月までほぼ1カ月ごとに高齢者と若者の日常生活下の温熱的生活環境を測定し,それらの季節差を検討し,高齢者の高温高湿屋内環境がいつ出現し,いつ消失するのか明らかにする.さらに,夏季において,高齢者が日常生活でどの程度発汗しながら生活しているのか,小型携帯用発汗計で検討する.25年度のデータと24年度のデータに基づき,高齢者の温熱生活環境や体温調節能力に即した熱中症予防策を提案する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小型携帯用の温湿度計および活動量計などを購入予定である.さらに,被験者の謝金,研究成果の発表のための旅費などに使用する予定である.
|
Research Products
(4 results)