2012 Fiscal Year Research-status Report
葉緑体の遺伝子組換えによるストレス耐性パンコムギの育成
Project/Area Number |
24658010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
寺地 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90202192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 博 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (10210345)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パンコムギ / 葉緑体 / 形質転換 / 遺伝子組換え / アスコルビン酸/グルタチオンサイクル / apx遺伝子 / ボンバードメント / 未熟胚 |
Research Abstract |
本研究は、モデル植物のタバコで確立された葉緑体の形質転換技術をパンコムギ(Triticum aestivum)に適用し、葉緑体の遺伝子組換え体を安定的に得る方法を確立することを大きな目的とする。また、この方法を用いて適切な遺伝子を葉緑体で強発現させることにより、強光や乾燥などの非生物的ストレスに強いパンコムギを育成することも目的とする。具体的には、葉緑体のアスコルビン酸-グルタチオン回路の酵素のひとつ、アスコルビン酸パーオキシダーゼの遺伝子(apx)をパンコムギの葉緑体ゲノムに導入し、この遺伝子を強発現させることで、ストレスにより発生する有害な活性酸素分子種(ROS)を効果的に消去させることをめざしている。 今年度はまず、葉緑体へ導入する遺伝子を得るため、パンコムギの葉から調製した全RNAを鋳型に、RT-PCRによりapx遺伝子のcDNA断片をクローニングした。次にこのcDNA断片を加工し、異なる4種類の葉緑体形質転換ベクター(葉緑体との相同領域はrbcL-ycf4あるいはrps12-16SrRNA、選抜マーカーはストレプトマイシンあるいはカナマイシン)へクローニングすることで、apx遺伝子導入用のプラスミドコンストラクトを構築した。 また、カルスからの再分化能力が高いとされるパンコムギの品種、アカダルマおよびBob Whiteを、京産大のビニールハウスおよび鳥取大学のグロースチャンバーで時期を違えて栽培し、5月と12月に未熟胚を大量に調製可能な環境を作った。その結果、通算で20,000個以上の未熟胚を調製することができ、300回を超えるボンバードメントを実施できた。 今年度、葉緑体の組換え体は得られなかったが、パンコムギを材料に、ある程度の規模で遺伝子導入実験を行うことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために行う実験は、大きく、1)導入プラスミドコンストラクトの作成、2)遺伝子導入に用いる外植片の調整、の2つの過程に区分されるが、いずれの過程も研究初年度の成果としては当初の目的を概ね達成できたと自己評価している。 すなわち1)では、コムギ葉緑体ゲノムの塩基配列情報(AB042230)をもとに、導入領域(rbcL-ycf4、23SrRNA-ndhH、rps12-16SrRNA)および抗生物質耐性(ストレプトマイシン、カナマイシン)の異なる合計6種類のパンコムギ葉緑体形質転換ベクターを完成することができた。一方、導入遺伝子に相当するapxは、6種類のベクターのうち4種類に組込むことができ、対照実験に用いるGFPは6種類すべてに組込むことができた。これにより、導入領域や選抜マーカーの違いによる葉緑体形質転換効率の違いを調べるなど、将来の実験の基盤が整った。 また2)については、京産大のビニールハウスで栽培したパンコムギ品種、アカダルマから、5月に約11,000個の未熟胚を調製し、合計191回のボンバードメントを実施したことに加え、今年度初めて鳥取大学との共同研究を行い、現地のグロースチャンバーを借用して、アカダルマ、およびパンコムギの別品種Bob Whiteを栽培することで、12月に両品種合わせて約9,600個の未熟胚を調製し、合計126回のボンバードメントを実施することが可能となった。 通算で20,000個以上の未熟胚調製と300回を超えるボンバードメントによっても、葉緑体の組換え体が得られなかったのは残念であるが、ある程度の規模で遺伝子導入実験を行うシステムは完成したので、これが次年度につながる成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に初年度と同様の実験を行う。すなわち、初年度に構築した葉緑体形質転換用プラスミドベクターとアカダルマ、Bob Whiteの未熟胚を用いて、ボンバードメント法による遺伝子導入実験を継続する。DNAの調製方法や未熟胚の調製方法などは変更しないが、ボンバードメントについては、異なる条件をいくつか設定して実施する。5月の遺伝子導入実験の結果をふまえて、12月の遺伝子導入実験では、さらに条件を改善する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の実験を実施するためには、パンコムギの栽培・管理など植物の育成の他に、未熟胚の単離・培養、プラスミドDNAのボンバードメントなど、特殊な実験に熟練した研究員の存在が欠かせない。そのため、次年度に適当な人材を非常勤嘱託として、できるだけ長期間雇用できるように、研究費を調整した。
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