2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子の発現を安定化させるゲノムDNA配列の体系的スクリーニング及びその解析
Project/Area Number |
24658012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
岸本 直己 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (00370651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 植物 / 遺伝子 / サイレンシング / 育種学 |
Research Abstract |
本研究では、位置効果(ゲノム内の挿入位置に依存した形質転換遺伝子の転写抑制)等、転写レベルの遺伝子不活化(Transcriptional gene silencing: TGS)を回避して導入遺伝子をより安定的に発現させるためのDNA配列を、植物ゲノムから見つける方法の確立と、その方法により“TGSを抑制する配列”(以下“ASR”と略記)の検索を目的とする。 当該年度は、我々が開発した「導入遺伝子が必ずTGSを起こす形質転換系」を用いた“ASR”の単離方法と、単離した3種類のDNA配列について論文を発表した(Kishimoto N, Nagai J-I, Kinoshita T, Ueno K, Ohashi Y and Mitsuhara I. 2013 PLoS ONE8:e54670. http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0054670 筆頭著者は本研究代表者;最終著者は連携研究者光原一朗)。 また、研究実施内容は以下の通り:(1)本研究では“ASR”を検索する際のマーカー遺伝子としてシロイヌナズナの開花遅延遺伝子FWAを用いる予定である。内在性野生型FWA遺伝子と、“ASR”検索用ゲノミックライブラリーに挿入したFWA遺伝子とを区別するため、後者のFWAに挿入変異を導入する事にし、そのための戦略とPCRプライマーを考案した。(2)“ASR”検索用ゲノミックライブラリー作製用のベクターをpBI系からpBG系に変更した。前者の利用では、抗生物質を含む培地上で抗生物質抵抗性を指標に“形質転換植物個体の選抜”を行った後、土壌へ移植する必要があるが、後者の利用では、土壌への直接播種により除草剤耐性を利用して“形質転換個体の選抜”が可能、かつ、その際の形質転換個体の損傷・事故死等をなくすことが可能となる等、利便性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
冒頭の【研究実績の概要】の項で記した様に、当該年度、投稿8誌目にして、我々が開発した「導入遺伝子が必ずTGSを起こす形質転換系」と、その系を用いて単離した「TGS抑制活性を示す3種類のDNA配列」についての論文が受理された(Kishimoto et al. PLoS ONE8:e54670. http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0054670)。8誌毎の投稿過程において、レフリー等からの追加実験要請等、対応に追われた。例えば、最終的に受理された“第8番目のジャーナル”の1誌のみに対応するだけでも、再投稿するまでに3カ月を要した(審査過程において「メジャーリビジョンを要す」と判断され、レフリー3名(合:否=1:1、保留1)のうち後者2名からの指摘に対して、追加実験等を実施し、その後、原稿を修正して再投稿)。 また、冒頭の「研究実績の概要」の項で記したとおり、“ASR”検索用ゲノミックライブラリーの構築において、(1)と(2)の変更をする必要が判明したため、研究の進展が遅れた。 これらに加え、当該年度は、実施計画に沿って、pBI系ベクターを用いて野生型FWA遺伝子を挿入したコンストラクトの構築を、既に開始してしまっていたため(本コンストラクト内のFWAは、内在性FWAと同一配列のため、両者を区別できない)、当該年度分の作業結果の殆どは、次年度以降の研究素材とならない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)“ASR”検索用ゲノミックライブラリーの作製:ベクターとしてpBG系プラスミド、マーカー遺伝子としてアラビドプシスの開花遅延遺伝子FWAを用いる。この際、ベクターに組込むFWA遺伝子には、予め2塩基(AT)を挿入しておき、内在性FWAと区別可能にしておく。この“pBG-挿入変異FWAコンストラクト”を用い、この中のFWAプロモーター領域にあるdirect repeatsの上流に、他種植物ゲノムから由来したDNA断片を挿入して、“ASR”検索用ゲノミックライブラリーを構築する。DNA源としては、イネ、トマト等を供試予定。 (2)「導入FWA遺伝子が必ずTGSを起こす形質転換系」を用いた目的配列の検索:我々の研究(上述のKishimoto et al. 2013)により、「当該の形質転換系」を用いて“ASR”の“TGS抑制能力”をモニターできることが判っている(“TGS抑制能力”がある場合、導入FWA遺伝子が発現して開花が遅れる)。この「形質転換系」を用いて(1)のライブラリーから“ASR”の検索を試みる。 (3) (1)と(2)を用いて作製した形質転換個体を栽培し、FWA遺伝子の活性化、即ち、開花の遅延を示した個体を選抜する。更に、選抜された開花遅延個体から、ライブラリー構築用コンストラクト内の特異的プライマーを用いてPCRを行い、“ASR”を回収する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【現在までの達成度】の項で記した理由(研究進捗の遅れ)により、当該年度は研究支援者等の雇用を見合わせたために、当該研究費が生じた。 物品費(プラスチック器具類、遺伝子工学試薬(酵素、キット等含)などの消耗品費)として、470,000円、人件費・謝金として700,000円、合計1,170,000円、の使用を計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Isolation of DNA elements reducing transcriptional gene silencing by a novel screening strategy.2012
Author(s)
Kishimoto N., Nagai, J., Kinoshita, T., Ueno, K., Ohashi, Y., Mitsuhara I.
Organizer
COLD SPRING HARBOR ASIA CONFERENCES (Oral session ) “Plant Epigenetics, Stress and Evolution”
Place of Presentation
中華人民共和国、蘇州独墅湖会議センター
Year and Date
20121029-20121103
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